別人ブック

No.0156

別人のなぐり書きをなぞり書く本

華やかな青春時代、公衆トイレの落書きを独りで黙々と眺めるのにハマっていたことがあります。特に、どこにも吐きだすことのできない悩みや愚痴や叫びがなぐり書きされているのを見るのが好きでした。その人らしさが強烈にあふれていたからです。

自分とはまったく無関係の人たちの激しい罵詈雑言を読んでは、「みんなも必死に生きているんだなあ」と感慨深く思ったり、「へえ、こんな悩みを抱えている人もいるんだなあ」と興味深く感じたり、「よかった。おれはこの人ほど病んではいない」と優越感に浸ったりしていたわけです。

ある日、いつものように別人のなぐり書きを薄暗い便器に座ってぶつぶつ口ずさんでいると、まるで本当にその人になってしまったかのような。そんな没入感に襲われたことがあります。気色の悪い体験でもありましたが、なんだか気持ちもいいような。不思議な快感が潜んでいたのを覚えています。

そこで、世の中の人たちの本音が力強く吐露されたなぐり書きが、さまざまな属性(年齢、職種、性別など)や人格・キャラクターごとに分けられてコレクションされた書籍をどなたかつくってくれませんか。それぞれのなぐり書きフレーズは点線になっていて、その上をなぞり書きすることができるようになっています。

あとは自分が体験してみたいタイプの別人のブックを買って、ひたすら毎日、なぞるだけ。きっと、そのうち、その別人になってしまったかのような瞬間に陥るはずです。

かのマザー・テレサも「言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから」と言いました。そして、その行動は最終的に運命にもなるのだと。もしかしたら、いつか運命すらも変えてしまう魔力を持った本なのかもしれません。

もしよければ、本当につくる際には、以下のコピーもご自由にお使いください。

それでは。