どうも山根シボルです。
早速ですが、今回はWebデザインの話がしたいんです。
私は専門学校を卒業してすぐにWebデザイナーとして就職し、転職したり起業したりしつつも、いまだ変わらずWebサイトを作っているんですが、最近少し悩んでるのが「Webデザインの面白さ」を、社員のみんなにどう伝えればわからないってこと。
確実に面白いんだけど、しっかり言語化したことがなかったWebデザインという分野を誰かと語りたい。そう思った時に、一番最初に頭に浮かんだのがなぜか“佐藤ねじ”でした。
違うけど似ている二人
佐藤ねじと初めて出会ったのは確か「1-click Award」というWebコンテンツのコンテストの打ち上げだった。その頃から彼は、思いついたアイデアを無料でサイトで公開していたりして、こっそりと「やばい」と思っていた要注意人物で、年齢は自分のひとつ下、デザイナー出身でプランナーやディレクターなどもこなすオールラウンドプレーヤー。
変な話、なんか似た性質を持ってる上位互換みたいな人だと思っていた。
山根シボル:
そもそも、ねじさんってどういう経歴なんでしたっけ?
佐藤ねじ:
一番最初はグラフィックの会社で紙のデザイナーをしていて、それから面白法人カヤックでデザイナーからディレクターになって6年、プルーパドルとして独立して……もう5年も経ったんですね。早いなぁ。
佐藤ねじ(さとうねじ)
株式会社ブルーパドル
アートディレクター/プランナー| 代表
1982年生まれ。面白法人カヤックを経て、Blue Puddle inc.を設立。『変なWEBメディア』『5歳児が値段を決める美術館』『Kocri』『くらしのひらがな』『レシートレター』『しゃべる名刺』『貞子3D2』など、様々なデジタルコンテンツを量産中。2016年10月に著書「超ノート術」を出版。主な受賞歴に、文化庁メディア芸術祭・審査員推薦作品、Yahoo Creative Award グランプリ、グッドデザイン賞BEST100、TDC賞など。
> ブルーパドル
二人が好きなWebデザイン
Webデザインの話をする上で、懐古的な話ではなく現在の話をしたいということもあり、お互いに「ここ1年くらいでデザインが良いと思ったWebサイト」を3つ持ち寄ることにした。最初に言っておくと、選んだWebサイトのタイプに想像以上のギャップがあった。
山根シボル:
それでは早速なんですけど画面共有しますね……
山根が選んだWeb その1
魔法部(フェリシモ)
山根シボル:
今どき、Webでリッチなイラストや空間の使い方を見せてくれると思わなかったし、ショッピングサイトで世界観を見せてくれるなんて贅沢でうれしいじゃないですか。ちょっとマジョリカマジョルカ思い出すのも年寄りとしてはポイント高いんですよ。今回、たくさんのサイトを見直していて、自分は「MEFILAS」の作るデザインが好きだと言うことに気づきました。「MEFILAS」はすごい。
佐藤ねじ:
動きやデザインの割にかなり軽くていいですね。
山根が選んだWeb その2
FOREVER FUN(Chupa Chups)
山根シボル:
2つめは、Chupa Chupsのブランドメッセージを伝えるためのサイトなんですけど、1〜2年前くらいから流行ってる「スマホサイト」をそのままの幅でPCで見せるタイプで一番気に入ったやつなんです。最近のWebデザインのギミックを全部詰め込んだような。スマホで演出ってどうすれば良いんだーって思ってる時に「ここまでやっていいんだよ」って教えてくれた気がして感動しました。
佐藤ねじ:
これは知らなかった!これいいですね確かに。「あえて」の見せ方が良いですね。
山根が選んだWeb その3
The ANRcade(Estee Lauder)
山根シボル:
昔、Flashでやってたリッチさの現代版という感じ、これって音楽業界で流行ってるいわゆる「リバイバル」じゃないか!って思ったんですよね。かつて流行したFlashを知っているからこそ面白みが増えるリバイバルという効果がこの業界にも来たんだっていう。
佐藤ねじ:
この時代にどういう提案をすればこういうのが通るんですかね……
僕は、この歳だからかわかりませんけど、逆にあっさりしたやつが好みになってきたんですよね。じゃあ今度は僕の方から紹介していきますね。
佐藤ねじが選んだWeb その1
隈研吾展
佐藤ねじ:
この頭の写真とロゴの動きがあるじゃないですか、中村勇吾さん的だけどそれともちょっと違うこの動きとか、ヘッダとメインイメージの間にある空間とか。
最近は、情報が見やすいサイトでワンギミックで見せるようなものが好きで、演出のせいで読みづらいとかは好きじゃないんですよね。下層の方のフォントサイズの大きさも絶妙だと思います。
山根シボル:
動きが、意味わからないのになぜか気持ちいいし、美しく感じる。Webデザインではなく別のジャンルのデザインを持ってきてる気さえしますねー。
佐藤ねじが選んだWeb その2
ポーラ美術館
山根シボル:
ちょっと待って、左上の「P」ってもしかして駐車場ですか!?やばい!
佐藤ねじ:
そうなんですよ。でもこれって誠実だと思うのが、駐車場の空き状況ってここに来る人にとって大事な情報じゃないですか。1回戦敗退するような情報をここにまで上げてしまうのって、慣習に従ってデザインするだけじゃできない、でも演出に偏っているわけはないバランスが良いと思いました。
佐藤ねじが選んだWeb その3
文春オンライン
佐藤ねじ:
特にスマホの方がいいんですけど、ただただ読みやすいんですよ。
漫画とかでも、なんだか文章が読みづらい漫画と、サラサラ読めてしまう漫画ってあるじゃないですか。読みやすいのは文章量だけじゃなくて、こういうリズムや間って一生モンのテーマだと思ってまして。デザイナーの菊地敦己さんの作品に通ずるような「絶対にマネできない間」みたいなのに憧れているんです。
最近では自分の作るサイトでも、できるだけシンプルにしてサラサラーっと読めることを意識してます。
ディフェンスのデザイン、フォワードのデザイン
ここではっきりしたのが、お互いの選ぶ基準が全く違っていたということ。自分は派手でインパクトのあるサイトを選び、佐藤ねじは情報をしっかり伝えているサイトを選んだ。
この違いを考える中で突然、佐藤ねじは“サッカー用語”を用いてWebデザインの「役割」について語り始めた。
山根シボル:
色々見てきましたけど、それでWebデザインって仕事は「◯◯◯だから面白いんだよ」っていうのが分からなくなってきたんですよね。
佐藤ねじ:
例えば、Twitterとかメルカリもスマホで見るコンテンツという点でWebと変わらないじゃないですか。そういうサービス的なものを見る頻度が増えて、逆にブランドサイトとかキャンペーンサイトって見る機会が減ってて、そこが結構大きいなぁ、という気がしてますね。
例えば好きなブランドの商品を見るのに、ブランドサイトやキャンペーンサイトはカロリーが高いというか……なんかWebサイトの役割が変わってきてますよね。
山根シボル:
Webのプロモーションとしての役割がひと段落してしまったような気がしてます。もしかしてPRというより、本質的なデザイン寄りにシフトしてきたのかな…… 最近はコーポレートサイトまで世界観を切り捨ててるというか。
佐藤ねじ:
デザイン寄りっていうか、世界観を表現するものが減ってきているんじゃないかと。
そういうのってフォワードであり、ミッドフィルダーでありみたいな「点を決めに行くやつ」っていうイメージなんですが、動画とか他の形の表現に移行してるものもある。
僕の感覚では逆に、“ディフェンス寄りの立ち位置のWebサイト”が増えたんじゃないかなと感じてます。
キャンペーンサイトなど世界観を作り込んだサイトが、PR的な意味でのフォワード(攻め)みたいな働きをしつつ、それを補強するためにディフェンス(受け)寄りの役目をするコーポレートサイトがあって、パスを繋げるように上手く世界観のバランスを取っていくみたいな。
山根シボル:
つまり、世界観作りをするような装飾的なデザインは「受け」を役割とするWebの需要に対して減ってきたと。
佐藤ねじ:
でも、「受け」って大事な立ち位置だと思うんですよ。
本当はディフェンス的なことをしないといけないのに、点取りたくなっちゃってるサイトって「上手くディフェンスできてんのかな」って思います。
もちろんフォワードも忘れちゃいけなくて、あくまで点を決めるために全部を機能させるためには、守ってるだけじゃなく“攻撃の起点”になるための最初のポジションとしてしっかりしていないといけない。
山根シボル:
そのフォワードのパターンも増えて複雑化してきましたよね、SNSとかYouTubeとか。
佐藤ねじ:
それはすごく思う。フォワードが変わったことに上手く対応できていなくて、バラバラになっちゃってるサイトも結構ありますね。
とはいえ、僕らが関わる案件って全部のポジションをやらなきゃいけないことって多いじゃないですか。商品も企業も。だから、この仕事はフォワードがすごいからディフェンスをしっかりさせよう、とか判断した上で、それに応じたWebデザインがあるって感じがしています。
佐藤ねじ:
僕らって、元々はフォワード役としてポジショニングされてたじゃないですか。だから点取りたくなる気持ちは今でもあって、完全にディフェンダーに移行するというよりも、フォワードやりながら守備範囲が広がっていってるような感じですね。
山根シボル:
確かに!それで考えが整理できた気がするんですが、僕らもフォワードとして呼ばれがちなんですけど、そっから見て「ディフェンス上手くいってないなー」って見える時もあるし、キャンペーンやる前にこっち直すべきじゃないですか?って監督に教えることもある。
佐藤ねじ:
めっちゃありますね。深津貴之さんがnoteに書いてた「穴あきバケツ理論」ってのがあるんですけど、キャンペーンとか広告をバーっと大量投下しても、受けるバケツに穴が空いてると、いくら注いでも出ていっちゃう。でも穴を完璧に塞ぐことに必死になってても水が増えないから、「程よく大きな穴を塞いで水をじゃんじゃん入れる」っていうバランスが大事だっていうのがすごい好きな話ですね。
佐藤ねじ:
僕はWebって、あくまで「フォワード出身のディフェンダー」だと思っているので、どちらの要素にもオーバーラップできる感じがすごく好きですね。SNSで、猫も杓子もインフルエンサーに頼ったりしている中で、あえてWebがオーバーラップしてきて1点決めるみたいなのはもっとやりたいんですよ、Web愛はあるので。
マーケティングにおけるすべての体験を作る
思えば、最初に3つずつ選んだWebサイトを見返すと、自分と佐藤ねじとで全くデザインのタイプが違ったのは「攻め」「受け」の役割できっぱり分かれていたからだった。
経歴や仕事は似ているのに全然キャラクターが違うのは、そもそもWebデザインをどう捉えているかが違っていたのだ。
山根シボル:
フォワードやディフェンスの役割とか、その連携が面白みだってのはわかるんですけど、やっぱり地味な気がするんですよね……
佐藤ねじ:
今って、Webマーケティングの担当としてフォワード的な部分を任されてる人でも、Webデザインまで出来る人って少ないじゃないですか。Twitter、Instagram、YouTubeのようなのは限られたフレームの中での表現ですし、Webコーディングに関しても「ノーコード」がどんどん増えていってる中で、Webデザインの本質として「どう情報を整理するか」「どう世界観を作っていけるか」っていうところはずっと残るんで、僕らみたいなWebデザインができるフォワードのスキルセットは今後も生かせるんじゃないかと思ってます。
山根シボル:
そういう意味では、Webデザイナー、もしくはWebアートディレクター的な役ができる人って少ないですもんね。
佐藤ねじ:
Webデザインの本質をどう捉えるかですけど、TwitterのOGPから移動してもらって、そこから何かブランドを知ってもらおうって時に、ユーザーがWebを見てくれるのって2秒とかじゃないですか。すぐにTwitterに戻っちゃう人たちに、Webから何を持って帰ってもらおうとかちゃんと考えた時のデザインって、単に整理されたデザインとは興味の持ち方が違うと思う。
そういう意味では、僕が見ている限りはグラフィックというよりマーケティングに近くて、ビジネスに繋がっている領域だと思います。
一般的なWebデザイン論じゃないかもしれないんですが、UI・UX・マーケティング・PRとかに、アート表現的なものも統合していくとめちゃくちゃGoodな気がしています。
山根シボル:
確かにそこにノウハウが詰まってるし、それを聞いて改めて思ったのはWebデザインやってると“瞬間的な伝達能力”みたいなのがやたら長けていくじゃないですか。メインイメージは数秒しか見ないとか、常にサイトからの離脱との戦いになるところが、雑誌とかとは違うところなのかなと。そこにクリック率とか導線とかも絡んできて、Webデザイナーの腕の見せ所って感じですよね。
佐藤ねじ:
幅が広いんじゃないですかね?
Webデザインの中には短時間でより伝えられるかっていうマーケティング的な面もあるし、世界観だけを表現してくれるブランドサイトみたいなのもある。今って、ポスター作ってWebへっていう流れが減ってきてて、Web主導でクリエイティブが決まっていくことが増えてきているので、そういう場合は全体のコミュニケーションの中心になったりする一方で、Webアプリとして情報を扱ったり、サービス連携するとかプロダクトツールにもなるわけですよ。
つまり、超グラフィック的なクリエイティブもマーケティングツール的なプロダクトとしても全部またがってるわけで、そのレンジの広さって素敵じゃないですか。
Webって「すべての体験」に引っかかってくるメディアで、これからもデジタル庁の頑張りで行政のWebも見やすく改善されていくでしょうし、幸いなことに世の中には使いにくいWebがまだまだ多い。そうすると、使いにくいものを使いやすくするっていう僕たちの役割は増えますし、仕事の領域自体がさらに幅広くなるんじゃないかなあって思いますけどね。
山根シボル:
そう考えると、Webって紙に比べてもっと積極性のあるメディアなのかもしれないですね。よりユーザーの体験に密接というか……
この話って僕とねじさんがお互いにWebデザイナー出身だから自然と理解し合えてますけど、これを若手のディレクターに伝えるのは至難の技ですよ。
Webデザインってのはイメージを見せるだけじゃなくて、ユーザーの体験というか、手触りをつくるような仕事じゃないですか。マーケティングのこともずっと頭の片隅に置いてなきゃいけないし。
佐藤ねじ:
僕がそういう若手の人とかに話すとしたら、いろんなビジネスに触れられるキャリアのルートとしては、Webデザインのルートは結構空いてるんじゃないかと思うんですね。
Webに進むと、サービスのUIだとか、マーケティング、PR、システムとか諸々複合的でベン図が広いわけですけど、それを理解して活かせる人は少ないですし、チャンスは多いんじゃないかなと思います。
だから本当に「Webデザインしかできません」ってのはちょっと狭いかもしれない。Webデザインをスキルセットの中心部分に置きながら、プラスでやりたいことをやれる人にとってはすごく強い武器になる気がします。
ユーザーが気持ちいい「受け」のデザイン
TwitterやYouTube、ニュースサイトなど、情報を受け取る場所が増えていく中、Webサイトの持つ役割も変わっていく。佐藤ねじはそれを「一番奥にいるディフェンダー」と表現した。
山根シボル:
そうなんですよね。キャンペーンだけとか、お店のサイトだけとか、作った経験が少ないと視野が狭くなっちゃうところがあると思います。
佐藤ねじ:
よく言うんですけど、一番小さいWebサイトとしてツイートの文章があって、そのアカウントのタイムラインがコーポレートサイトみたいになるじゃないですか。そこにプレスリリースも乗っかってくるんですけど、その先でさらに細かく世界観付きで説明したものがWebみたいな感じですよね。その中で何か企画をやる場合、やはりコアとなる部分を表現するのにWebってすごく有効なんです。ツイートやプレスリリースはそれを圧縮したものになるはずで、企画自体を伝えるのはWebの方が話が早いというか。
山根シボル:
えーっと、企画があって、ツイート、タイムライン、プレスリリースがあって、Webがどのへんでしたっけ?
佐藤ねじ:
多分、一番奥。さっきの話だとまさにディフェンダーですね。
人を増やす役割をするのがフォワードで、Twitterとかプレスリリースから飛んでくるのを受けるのがWebサイトになると。
いきなりツイートを起点にして企画やコンテンツを作った場合でも、それらをまとめる一番情報量の多いものとしてWebがあるんで、要はそこを作れることでプロジェクト全体を握れる場合も結構あるんですよね。
山根シボル:
それを聞いてちょっと思ったのが、最近Webの持ってる意味を改めて考え直したりはしてないなあ、当たり前になりすぎてるかもなあと。キャンペーンにおいてWebも作るってのが流れになりすぎてるというか。
人を呼んでくる仕組みだけしっかり説明して、呼んできた人の気持ちをどう動かして、どう情報を持って帰ってもらえるかっていうのをハッキリ伝えないと、Webの重要度が下がっちゃいそうですね。
佐藤ねじ:
例えば、こういう子供服の場合だと、一個の商品を紹介したツイートがバズったりしたら、その商品はたくさん知ってもらえるんだけど、もしそこでWebにまで来てもらえたら「他にもこんな商品があるんだ」とか「障害児向けのもあるんだ」とか気づいてもらえるかもしれない。
そういうのってTwitterでは結構無理で……やっぱワンシーンですよSNSは。本当に。
もし若い人にWebの面白さを伝えるとしたらですね、このジャンルに「芽があるかないか」って重要じゃないですか。そういう意味では僕は年々、稼げる余地は増えてると思う。
“のこる”デザイン
佐藤ねじの話には、度々「残る」という言葉が印象的に挟み込まれていた。私は紙と違ってWebサイトは「残らない」ということをずっと寂しく感じていたのだが、彼はWebこそ残ると信じているし、長く残すために神経を注いでいるということがわかってきた。
佐藤ねじ:
キャンペーンサイトの話が多かったですが、コーポレートサイトとか複雑なWebもやるかで分岐しますよね、企業の世界観をまとめていく感じが僕は結構好きで。
残るっていうか、長く使われるじゃないですか。キャンペーンと比べると結局残るのはそっちになってくるんですよ。僕らの世界って3年経ったら残ってないってことが多いと思うんですけど。
山根シボル:
そう、コーポレートサイトや公式サイトとかって「残る」がキーワードですよね。
佐藤ねじ:
カヤックって、2〜3年に一回、Webサイトをリニューアルしていたんですけど、2016年に僕が退職する前にアートディレクションをやったんですね。
1つ前のカヤックのWebって「漫画風」を推しすぎてて、見にくくなってる気がしてちょっと苦手で。だから、基本的にはシンプルで見やすいサイトを用意して、5種類の世界観(デザイン)からユーザーが好きに選べるという形式にしたんですが、その次のリニューアルでは、そのシンプルなやつだけが残ったんですよ。
山根シボル:
確かに最初、デザイン選べましたよね。いつの間にかなくなってる……
佐藤ねじ:
当時は「そんな機能なくてもカヤックは中身が面白ければいいから、外側は面白くしなくても別にいいんです!」ってめっちゃ言ってたんですよ、一社員として。
だから、最初に作った5種類のデザインの中で一番シンプルで真っ白なデザインが今も残ってて、ちゃんと使われてるってのは、派手なサイトを作るのとは全然違う良さがありますよね。
山根シボル:
そもそもカヤックって独特だから、それが一番伝わりやすい方法を選んだと。
佐藤ねじ:
“道具を作っている”ような感覚に近いです。長く使われるってやっぱ嬉しいというか、存在意義みたいなものがありますよね。「残る」っていうのは本当にキーワードかもしれない。まぁ、コーポレートサイトってやっぱり面白いですよ。
山根シボル:
しかし「残る」って言っても、結局フィジカルっていうかモノの方が残るんじゃないですかね?
佐藤ねじ:
いや、50年とか100年とかだとわからないですけど、10年くらいずっと見られる場所に残ってるのはWebの方が多いんじゃないですかね?例えモノだとしてもその画像をWebで見ますよね。キャンペーンサイトとかは権利関係で消えるとか、実装の所で動かなくなるとかはありますけど。
山根シボル:
それこそ、Flashって今年消えたじゃないですか。あれで古いWebコンテンツは一気に減りましたよね。思った以上に誰も悲しまなかったけど。
佐藤ねじ:
ちょっともったいないですよね、文化としては。
僕でいうと、「劣化するWEB」とか「世界で最も小さなサイト」みたいなやつってずっと誰かが見てるんですよ。かなり前の作品ですけど、世代が変わったとしてもWebだったから発見されやすい。
山根シボル:
確かにそういうのは、サーバー契約し続けるとか、たまにメンテナンスさえすればずっと残るわけですよね。
佐藤ねじ:
あと、僕が最近思ってるのは、今後こういう表現をちゃんとグローバル化した形で全部まとめようと思ってて。今やってるものとかは割と「拡散」とか「バズ」とか考えて、より日本のネタに合わせて面白さを作ってるわけですけど、一連の作品の構造的な部分を残して中国語とか海外版として作り直そうと思ってんです。自分の作ったコンテンツが世界中から見られるチャンスがあるのって、動画かWebコンテンツしかないと思うと、Webコンテンツをアート的に捉えても良いのかなと。
日本じゃ古いけど、海外じゃ新しいとかってめっちゃあるじゃないですか。
一度国内でバズった動画とかでも、世界中から見られるようにするだけで、もっと評価されるチャンスがあるんですよね。
話をすこしまとめます
山根シボル:
実は、もう2時間以上しゃべってて……
話も色んな方向に言っちゃってるんで、一回まとめてみてもいいですか?
佐藤ねじ:
いや、こういう話って楽しいですね。山根さんは悲観してるけど、僕は逆にチャンスを感じてるんですよ。今ってTiktokとかにゴールドラッシュが来たりしてるけど、Webって10年前にそれが去った業界じゃないですか。しかも、歴史が浅い上に流行のサイクルも早い。食えない人も出てしまうかもしれない。でもだからこそ、そこに残れることには価値がある。
山根シボル:
普遍的なものに変わりつつあるこの業界で、未だ価値を生み出し続けられることに意味があるって感じなんですかね。
佐藤ねじ:
ジブリってめっちゃ普遍的じゃないですか、作品としては。そういう本質的に面白いもの、良いものは残り続ける傾向がある中で、今までWebはそうじゃないジャンルとして扱われていたけど、それって場合によるんじゃないかって。今更、中村勇吾さんのようなゴリゴリな世界には行かないにしても「中村勇吾さん的な気持ちよさ」はいつになっても良いじゃないですか。
やっぱり、「残るWeb」っていうのは僕一個人のテーマとしては持ってますね。
賞味期限が短くて太いインパクトのあるWebと、いつまでも残るWebとは全然意味が違って、役割が分かれていてるのかなあと思います。
最後にお知らせ
ここまで語ったあとになんですが、株式会社人間では現在Webデザイナーを募集しております!
面白い事例が目立つ我々ですが、実はブランディングやコーポレートサイトも真面目に挑戦したりしていますので、自分で、好きなだけ、デザインやりたい方のご応募お待ちしております!
> RECRUIT / デザイナー