なぜ私たちは白井康太にお金を払わなければならないのか?


みなさんこんにちは。
久しぶりにインタビューしにきた、弊社代表 兼 アイデアマンの山根シボルです。

左から弊社花岡、山根、そして白井康太

さて、株式会社人間では約3年間、白井康太というぽっちゃりした男にお金を払い続けているのですが、ひとつ不思議なことがあるのです。
この白井康太という男は、自分では何も作らないのです。

白井康太の肩書きは「PRプランナー」。
つまり「パブリックリレーションズをしている」とのこと。
この言葉に馴染みのない方のために、改めて調べてみるとこんな説明がされていました。

つまり広報・パブリックリレーションズは、“関係性の構築・維持のマネジメント”である。企業・行政機関など、さまざまな社会的組織がステークホルダー(利害関係者)と双方向のコミュニケーションを行い、組織内に情報をフィードバックして自己修正を図りつつ、良い関係を構築し、継続していくマネジメントだといえる。

引用元:パブリックリレーションズとは | 公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会
https://prsj.or.jp/aboutpr/

 

さらに、白井康太という男は弊社以外にもさまざまな企業にお金を払わせており、そこでも“提供しているものが見えない”というところに、私は甚だ懐疑的です。

今回は「なぜ株式会社人間は白井康太にお金を払わなければならないか?」という疑問を通して、人間の仕事をPR面から振り返りつつ、“何をすることがPRなのか?”を改めて考えます。
その答えによってはもう、お金を払わなくてよくなるかもしれません。

白井康太の仕事は見えない

今回のカメラマンは弊社花岡にお願いしました

白井康太(しらいこうた)
PmanR(ピーマンリレーションズ) PRプランナー
大阪を拠点に企業の広報/PR業務の代行、広報部の教育、広報部の立ち上げをメインに、PR視点で見た企業ブランド醸成のお手伝いしています。

 
── 今回なんでこういうテーマにしたかって言うと、白井さんの仕事って僕らにもみんなからも見えないんですよね。まず率直に聞くと、白井さんって何を売ってるんですか?

白井:
まず何を売ってるかって言うと「媚を売っている」ですよ。
そもそも自分には売り物がなくて「他人(ひと)の会社を売る」っていうのが近い。
例えば、今はクライアント別に10種類くらいの名刺を使って仕事してるんです。
だって色んな会社のクライアントにお会いした時に、わざわざ自分の説明するのもったいないじゃないですか。

── 10種類も使い分けてるって、大嘘つきじゃないですか。

白井:
いや、嘘つきじゃない! むしろファクトマンです、僕は。真実しか言わない超ファクトマンです。

── (ファットマン……?)じゃあなんで他人の会社名を語って仕事してるんですか?

白井:
自分の仕事って単発でやることがほとんどないので、PRする会社の白井として関係を続けてもらった方がいいんじゃないかと思って。
あと僕の場合、PRをさせてもらう企業と長く付き合っていくわけで、自分の屋号の名刺を配り倒すって感じにはならないんです。苦楽を共にするその人たちとはFacebookでつながってる程度でも全然ビジネスは始められますし、自分の名刺を配る必要がないんですよね。

── なるほど、だからといってはなんなんですが、僕から見ても結構「この人はどういう仕事をしてるんだろう」って見えにくいところがあって。具体的にどんな仕事をしてたりするんですか?

白井:
さっき「他人の会社を売る」って言ったじゃないですか。売るって言ってもお金を運ぶだけじゃなくて、リソースになるものならなんでもいいんです。例えば「この人材ならこの会社の採用に」とか、「メディアが取材してくれるかも」とかもひとつの成果だと考えてます。
だからKPIとかクリエイティブのような「これ作りました!」と言えるものがないんですよね。

── 他人の会社を売ってるから、売り物がないということですか?

白井:
本当に具体的なところだと「プレスリリースを作る」とか「取材の依頼をまとめる」とか「ニュースレターを発刊する」とか、NPOなら「活動報告を作る」だとか色々あるわけですけど、コンテンツの制作部分だとか、売りの部分を作ることに関してはあえて“自分では作らない”ことにしてますね。逆にそれを“社内の人に作らせる”ということが自分の役割だと思ってます。
だから自分で企画は考えないし、企画を考えさせるのが仕事です。

── 白井さんから企画を立てることはない?

白井:
今はあまりないですね。人間さんは特殊で、企画を社内で全部やりますよね。
それが他社では、僕が「社内でできるようになってください」って言う役割なんです。それができる会社の方がかっこいいし楽しいと思ってて、人間さんを例に出して、どうやって社内で企画を考えるかを語ることもある。
僕が企画書を作る場合は、ゲームの「ルールブック」のようなものを作ってます。それをきっかけに、企画を考えられる脳みそを育てているお客さんもいますよ。
だから人間さんとは真逆で、僕自身は当たり前のことしかやってないんです。

 

社長は当たり前のことができない

白井康太の前にカツを添えると質感が似ていた

── 逆になんで当たり前のことをやってお金がもらえるんですか?

白井:
それは明確です。みんな、当たり前のことができない人たちだから、当たり前のことができる僕がお金をいただけるのだと思っています。特に社長はできないですね。
「社長」って言うと、そのへんできる人もいるから極端になっちゃうんですけど。
少なくとも、僕が仕事させていただいているような会社の社長って基本的には変なんです。
語弊があるかもしれないけど“生活レベルが低い”。

── なんて言い方するんですか。

白井:
まあ言い方はアレですけど、つまり何かに秀でてるけど、それ以外の当たり前のことができないところがある。困ってる経営者って絶対何か足りてないんですよ。一人で突っ走って社員をおいてけぼりにしちゃう人も少なくない。
だから、自分を補ってくれる人を社員としていれるんですが、自分の想いにめちゃめちゃ共感して、そこを推進してくれる人はそんなにいないんです。
「作れる人」は多くなるけど、そこに「お題を出せる人」があんまりいない。
僕はずっと問いを立てられる人が少ないと思ってます。

── それは社内だからできないってことですよね?

白井:
そう。自分たちのことだから歪でも当たり前になってきてしまうし、自分自身に問いを立てるのは難しいことです。例えば僕が「この給料制度みんなハッピーなの?」みたいな問いを立てないと、誰も立てない。怖くて。

── PRの仕事っぽくないですよね。企業の相談役に近いというか。

白井:
うーん、だから僕も最近肩書きに困ってて……自分自身は、PRプランナーだとは思っているんですが。
そもそもPRって、何かをメディアに出すことだけがPRじゃないですから。
例えば、昨年僕のお客さんのお店が1店舗閉店することになったけど、その時は店がなくなる前から社長の相談役になってて、次のプロジェクトが始まる前から計画に関わらせてもらってるんですね。
PRって割とプロジェクトの最後らへんにするものと思われるかもしれませんけど、プロジェクトの最初から最後まで、終わったとしても面倒を見ますし、PRって常にあるんですよ。
僕にとってのPRって、プロジェクト単位で仕事するわけじゃなくてずっと付き合うもの。
だから、クライアントさんとはなかなか縁が切れないんです。

 

株式会社人間にPRという文化を作った

帽子が「醤油差し」と完全に一致した白井康太

── 弊社(人間)とも、もう3年の付き合いですもんね。もし白井さんが関わってなかったら「これができてなかっただろうな」ってこと、あります?

白井:
いや、僕がいなくても花岡さんは広報とかPRに力を入れているから、いつかはできたと思いますけど、少なくとも中居正広さんの番組には呼ばれてなかったはず(笑)
人間さんのPRに関しては継続的にやってきたことが大事で、一見意味ないこともやってきたじゃないですか、モバイル支社とか。その実験を一緒にやってきた感覚が僕の中にはあるんですよ。ブラック企業体験イベントの時のバックルームとかは最高でしたね。

── あの時は取材がいっぱい来ましたけど、メディアへのアプローチも頑張りましたもんね。

白井:
泥臭いことね。誰でもできる仕事ですけど、価値に気づきにくいですよね。
そう。僕はね、この会社に「PRの文化を作った」ってことがひとつ貢献かなと思いますね。

── 原始人だった我々にね。

白井:
PRっていう道具をもたらしたんですよ、僕は。
とはいえ、制作会社がPRとか広報に興味持ってるって珍しいと思いますよ。
制作会社の方たちって、自分たちのアイデアが商品というよりも、作品だと思ってる感覚の人の方が多そうじゃないですか。
だってみんな『ブレーン』は読むけど、『宣伝会議』とか『広報会議』ってあまり読まないでしょ?
そこは代理店がやってくれてるってところもありますけど。
人間さんも「部分じゃなくて全体やりたい」とかいいながら、部分の方の知識だけで戦っていることってありませんか?

── 最近の人間での白井さんの役割って、社会問題とか全体に組み込む工夫について考えてくれてる部分はあるかもしれませんね。うちって元々は作品づくりに凝るタイプですし。

白井:
それはめっちゃ考えてますね。その悩みを花岡さんと共有してる感じはあります。
作品づくりに目がいき過ぎて、広報の感覚がないというか。僕から見たら「こんなに面白いもの色々持ってるのに、全然知ってもらおうとしてないな」って、見える。
初めて僕がPR担当として入った時って、年間報道件数二十件以下とかでしたけど、蓋を開けたら面白い作品をいっぱい作ってるんですよ。単純にプレスリリースを打って、電話をするだけでもメディアが取り上げてくれる状態でしたからね。
だから、当初は「株式会社人間という謎の会社を世の中に組み込むにはどうすればいいか」から考えたし、人間のWebサイトをリニューアルしたり、求人情報を書き直したりしましたよね。

白井康太が参加してから増えた報道件数

 

会社の「凹み」が見える男

白井康太が食べていたイカ

── そもそも白井さんってなんでPRの仕事を始めたんですか?

白井:
最初はフリーランスの何者でもないクリエイターの集まりにいたんですけど、その頃はものづくりとか、企画とかやりてえなとは思ってましたよ。それこそ人間みたいに。
でも、途中で自分が「相手の顔色をうかがうのが得意」ということに気づいたんですよ。
「人とのコミュニケーション」みたいなところがずっと好きで、誰が何考えてるのかみたいな、人の感情に気づけるとか、だんだんこの役割が自分に向いてることがわかってきた感じですね。

花岡:
白井さんと初めて会った頃に印象的だったのが、初対面のお客さんをすごく観察してて、帰った後に「あの人はこう思ってたはず」とか「手癖がこうだからこんな癖があるんじゃないか」とか、人を洞察する癖があるのが面白かったのを覚えてる。

── 「人を見る」能力に気づいてPRに目覚めたってこと?

白井:
そういうわけじゃないんですが、クリエイター時代にある企業のブランディングの手伝いをしてたときに「絶対どっかが凹んでるな」って気づいたんですよ。
例えば会社が新商品を作るってなった時に、やってんのは結局マーケティングで、気がついたら社員誰もこの商品を愛していない、みたいなことがあるんです。「それって直すところ間違えてないかな?」みたいな。逆パターンだと「僕たちがいいと思ってるから、売れるに決まってる」とか平気で言う人とかもいて。
そんな疑問をずっと考えてる時に、30年以上やってるPRの会社の社長に「白井くんの興味関心があるところは、PRで解決できるんじゃない?」って言われてPRを学んだんですよ。

── その「凹んでる」って見え方が独特ですね。一体何が見えてるんですか?

白井:
会社ってずっと凹んでるんですよ。どっかが。
例えば、社長が外でずっと動いてたら、社内はついてきにくくなるのは当たり前なんですよ。社内が見れなくなるから。そしたらせめて僕が、社内の状況見て社長に伝えようって思うし、逆に社長が社内見始めた時に世の中の動向がわからんくなったら「営業一緒に行きませんか?」って聞いてみたり。
そんな凹みに誰よりも気づくタイプだから、この仕事が向いてるんだと思います。

── 最初の話にもつながってくるんですが、白井さんって「行動させる」ってところにこだわりがありそうですね。

白井:
めちゃくちゃこだわってますね。そこで行動してもらえなかったら、僕にお金払う価値もなくなってきますし、それより社内でも社外でも何か動きが変わらんことには意味ないと思います。

花岡:
白井さんの仕事ってチマチマしたもんばっかなんやけど、そのチマチマした凹みを埋めていくところが価値なんかもしれない。大きな部分って見えやすいし頼みやすいんよ、でも白井さんは小さ過ぎて見えない問題が見えてる。

── その小さな凹みをどうやって改善させるんですか?

白井:
潔癖症で完璧主義なところはあって、人間関係も綺麗な球体じゃないと気がすまないのかも。例えば、会社が膨らみ続ける球体だとして、凹んでる部分を内側から押し上げて埋めるようなイメージです。社員全員のパワーで。で、そのうちまた差異が大きくなるからそこを埋めていく。

── その時の白井さんの立ち位置って、その球体の外にいてメガホンで叫んでるイメージですね。

白井:
「凹んでんで〜」ってね。

図解するとこんなイメージ

花岡:
だから白井さんってずっと喋ってるだけやもんね。
で、自分が鍛えて持ち上げてるわけでもないっていう。「お前ら鍛えろよ」って。

白井:
思ってる思ってる、パーソナルトレーナーみたいな。
「口だけ」って言われてたこともありますけど、それでも意識が変わるとは思いますよ。
僕が何か言ったことで、落ちてても目も向けなかったゴミに目が向くようになってくれたら、それが一番嬉しいんです。

── なんかもう、広報とかの話からだいぶ外れてきてないですか?

白井:
世の中的に言うPRの領域じゃないかもしれないけど、僕からすると全部PRにつながってて。
「何やってるかわからない人なのに、相談したらごちゃごちゃを整理してくれるような人」っているじゃないですか。アレを目指してる。
最近、考えてるのは企業同士のリレーションで、メディアとつなげてくれるPR会社はあるけど、企業と企業をつなげるのもPRだと思ってるので、次はそんなことをやってみたいですね。

 

僕らが白井康太にお金を払う理由

── それじゃ最後に、冒頭のテーマである「白井康太にお金を払う理由」をまとめてみましょうか。

白井:
まだ言ってんすか。だから……
・ちゃんとメディア対応ができるようになる
・社内に外部とつながれる人が少ないのを補える
・企画を社会へ組み込むことを考えられる
・社外から社内の「へこみ」が指摘できる
・経営陣の壁打ちのカベになる(相談)
・何より、人間に「PR」という文化を作った
とかですかね……。

── と、言ってますがどうですか花岡さん。

花岡:
ええけど、なんかインパクトないな。

白井:
これでわかったと思いますけど、僕は当たり前のことしか言いませんよ。
企画を考えるのはあなたたちの仕事!

笑顔が素敵な白井康太