2018年11月23日の勤労感謝の日、「ブラック企業体験イベント THE BLACK HOLIDAY」を東京都新宿区某所にて開催しました。
この企画は、11月頭にWebサイトを公開してから1ヶ月経っても話題になり続けるくらいの反響があり、我々にとって壁だった「鼻毛通知代理サービス チョロリ」を超える最大級のバズり方をしてしまいました。
数々のネットメディア、地上波のテレビ局、さらになぜかドイツのテレビ局まで取材しに来て頂き、ありがたいことにイベント後もかなり話題を拡散していただきました。
この「イベント後にも面白さを広めたくなる」というのは、表現をする者として最高に嬉しいものなのですが、今回の成功は、イベントの演出・出演を担当していただいた「劇団 子供鉅人」のおかげだと思っているので、それを証明するためにこの場を使って子供鉅人をべた褒めしようと思います。
子供鉅人と人間
「劇団 子供鉅人」は2005年に益山貴司・寛司兄弟を中心に大阪で結成した、人間存在のばかばかしさやもどかしさを、黒い笑いをまぶして表現するような劇団である。正統派な演劇はもちろん、生演奏を使った音楽劇や、水上バス型観光船に乗り込んでの演劇、家屋の解体をしながら演劇、114人のキャストで「マクベス」を上演、など数えればキリがないほど、劇場の枠に留まらない柔軟性の高い表現力を持っている。
つまり、株式会社人間はなんでもやってしまう子供鉅人になんだか親近感が湧いているのだ。
そんな子供鉅人の団長、益山貴司氏に、2018年の正月休みに偶然会ってしまった。
今回のイベントを着想したのは1年も前のことで、イベント名だけだったこの企画をどうしようかなーなんて思いながら、スタンダードブックストアのカフェでブレストして帰ろうとした時に、後ろから声をかけられた。
1時間くらい立ち話したと思う。初めて益山さんとちゃんと喋った。
「一緒になんかやりたいですよねー脚本家としても全然なんかやりますよ」みたいなことを言う益山さんに、「そんなら、うち今年ブラック企業体験イベントってのをやろうと思ってて、一緒にやりたいっすねー。」みたいなことを話したのを覚えている。
頼れる人々と人間
今回は、イベントの演出・出演は劇団子供鉅人、Webデザインは株式会社闇、コピーライティングは田辺ひゃくいち(一)、撮影は株式会社鬼と、内容から見た目まで個人的に信頼の強い上京勢に頼った。さらに、PR面では株式会社まめに手伝ってもらい、メディア対策にも注力した。
奇跡的なスピードで完成したメインビジュアル
人間が行ったのは企画の根幹や全体のプロデュースだけで、ここまで内容まで外部に頼ったことはなかった。この企画に限らず、今年の人間は色々な専門家に力を貸してもらうことをテーマにしていて、それは花岡が決めた方針だったが正しかったし面白いほど結果に変化があった。
僕はデザイナーでありネタ作りをする役だったので、正直プライドもあって中枢部分を外部にお願いすることに抵抗もあったが、2018年からは肩書きを「アイデアマン」に改めたので、そのへんの気持ちの整理もしやくすくなった。
結果的に、益山さんに相談して本当に良かった。
「参加者を絡ませる(仕事体験させる)」「ブラック企業のエピソードをできるだけ入れる」「残業させる」「雰囲気はエンタメ寄り」など、イベントの基本構造を伝え、脚本を作り始めたのだが、今まで様々な形式の演劇を作り上げてきた益山さんの意見は的確で「何をすればお客さんがどう思うか」ということの知見に関しては、ただただ感心するばかりだった。そして、この人も本当のSだったのである。
「この人も」としたのは、花岡もSだからだ。いかにお客さんをだますか、お客さんの心を裏切るかを念頭に置いているところがある。
「自分よりだいぶ年上のおじさんがめっちゃ怒鳴られてるのとか見てみたいじゃないですか」と益山さんは笑う。つられて笑ったが、そんな発想、変態じゃないか。
しかし、エンターテイメントに必要なのはこの色んな表情のお客さんを見たいという欲望だろう。
台本が出来上がったのはイベントの3日前くらいであったが、リハを見るだけでめっちゃ笑ってしまった。いつの間にか子供鉅人フルメンバーでの劇になっており、全員の息が合っているのもあるが、前から怒鳴られたり後ろから悲痛な声が聞こえる体験は、VR映像を見てるような不思議な臨場感があった。劇団員に対し「このクズ!」と罵詈雑言を大声で言わされる体験も本当にイヤで、ざわつく脳内の奥で「これいけるやつや」と確信を持つことが出来た。
ブラック企業体験 成功の巻
そして、イベント本番の前日、各メディア向けのプレイベントが行われた。
リアルなオフィスを模した会場で、多くのビデオカメラに囲まれたなか、様々な実話から生まれたブラック企業「スーパーミラクルハッピー株式会社」の社員となった劇団員の怒号が飛び交う。
異様に騒々しい職業体験が約1時間半ハイテンション、ハイスピードに繰り広げられたのだが、子供鉅人らしい笑いと、イベントらしからぬ参加者への罵倒、思ってもいない行動をさせられてしまう参加者の導き方に、ブラック企業としてのリアリティがにじみ出ていて、めちゃくちゃ面白いのに「変な後味」が印象的な劇になったことが嬉しかった。
本番である勤労感謝の日には、248名の応募の中から「上司」にあたる一般人の方30名を厳選させて頂き、イベントを開催。管理職から代表取締役まで、普段は相当な仕事をされている人々に片っ端から社訓を叫ばせ、怒号を浴びせ、反省文を書かせる様は、その行動以上に感慨深いものがあったし、絶対ひとりくらい怒る人が出るんじゃないかと思った内容も「昔いた会社を思い出して懐かしかった」「こういうことはいまだにある」「社会を知らない学生のために大学でやってほしい」など、前向きな意見が多く、このイベントが「ブラック企業体験イベント」として成立していると、参加者様に自信をもらった気がした。
(イベント時の映像は別室でモニターしていてきっちり爆笑させていただきましたが)
スーパーミラクルハッピー株式会社は存在する
このイベントの「変な後味」はやはり、劇中の非常識な演出がブラック企業の実話を元にしていること、そしてそのブラック企業は現在も実在していることにあるのだと思う。
自分が生きている同じ社会に「スーパーミラクルハッピー株式会社」は存在していて、今回はたまたまそれを体験しただけということ。不謹慎ですが、僕が一番面白いと思ってるのはそこです。
そのイベント内容は各ネットメディアのレポートを読んでいただければわかりますが、もしもまたやる機会があるとしたらネタバレになるので、読むかどうかはお任せいたします。(次回の予定ないですが)
◯ 素晴らしいレポート
「1週間の徹夜は我慢しろ」「死ねクズ」 ブラック企業体験イベントで、どれだけ罵倒されても「この会社にいたい」と思った話(キャリコネニュース)
「サービス残業は当然」「お前はバカか」――怒号飛び交う“ブラック企業”体験イベントが怖かった (ITmedia ビジネスオンライン)
ブラック企業体験イベントに参加して、軽く洗脳されて、その経済合理性に気がついた #ブラック企業体験(Togetter)
◯ 動画で見られるレポート
“ブラック企業”を体験してみた「死ねよ」(日テレNEWS24)
“ブラック企業”の実態 体験イベントにカメラ潜入(ANNnewsCH)
このイベント、社内研修や学生向けにしてみたいという思いもありますので、「うちならできるよ!」という方はこちらまでお問い合わせくださいね。
エモい作品づくりだった
イベント終了後、ヘトヘトになっている益山さんから飛び出たのは「皆さんに本当に謝りたい!」という謝罪の言葉だった。益山さんだけではなく、劇団員全員が罪もないお客さんに対し罵声を浴びせたり嫌味を言ったり、性格悪く接するのが精神的にキツく、徐々にエスカレートする自分が怖かったらしい。せっかくの反省文をくしゃくしゃに踏みつけ、それを拾って「これがお前なんだよ!」というセリフがアドリブで出るような日々を続けてたら、そりゃ心になにか問題が起きそうだ。
あと、今回の大勢の取材陣の対応や当日の仕切りなど、PRを手伝ってもらった白井さんが打ち上げで「会社のお偉いさんを、演劇の人間が責め立てるのが嬉しかったんすよ〜」と熱くなってるのが面白かったです。平然として存在する「会社>表現者」みたいな構図も考えれたら面白いっすね。知らんけど。
とにかく、最後まで色んなことを考え、新しいものを生む感覚を感じられたいい作品でした。
【関連リンク】
ブラック企業体験イベント「THE BLACK HOLIDAY」
劇団子供鉅人 公式サイト
クレジット
Producer: 花岡(人間)
Art Director: 頓花聖太郎(闇)
Planner: 山根シボル(人間)
Director: 佐々木航大(人間)
Copywriter: 田辺ひゃくいち(一)
Designer: 頓花聖太郎(闇)、松尾聡(人間)
Coder: 奥田 裕介(OKUDA YUSUKE DESIGN)
Programmer: 久保田健司(闇)
Photographer: 金沢康行(鬼)
Scriptwriter: 益山貴司(子供鉅人)
Cast: 子供鉅人
Act Assistant: 新藤江里子(子供鉅人)
Supervision: 新田龍(働き方改革総合研究所)
PR: 白井康太(まめ)、トミモトリエ(人間)