あけましておめでとうございます。
山根シボルです。
株式会社人間が、初めてWebメディアとして「行け!メンタイ部」を立ち上げたのが2014年3月。
それから、他社と共同でWebメディアを運営したり、社員だった社領エミがWebライターになったりしてるうちに、関西でのWebメディアに関する需要が多いことに気づきました。
そこで昨年、弊社トミモトリエが編集長(リーダー)になり、Webメディア専門のチーム「人間編集部」を結成。
年末には公式Webサイトも公開し、これまでのWebメディアの仕事もまとめることが出来て準備万端です。
しかし、私自身は編集者としての経験も勉強も実は全くしたことがありません!
勘で「編集ってのはこういう仕事なんだろなぁ」と思いこんでるのもそろそろヤバイなと思っていたので、これを機にはっきり「編集」という仕事について知らないといけない!
というわけで、今回は大学在学中より月刊誌『TOKYO GRAFFITI』編集部に所属した後、ノリと勢いで大阪に移住し、フリーライター兼カメラマンとして、そして人間編集部の副編集長として“雑誌とインターネット”の二足の草鞋を履きながら活動の幅を広げる「ロマン」さんに、編集者の仕事とは何なのか、そして編集者としてWebメディアに何を期待しているのかを聞いてみました。
「ロマン」さん28歳。
名前の由来はロマンチックだから。
近所の居酒屋でゆるめに聞きました。
はじめから編集者になろうって思ってました
── まずなんで編集者になったんですか?
ロマン:
小さい頃から本を読むのがめちゃくちゃ好きで、小説を書いたりしたんですけど全然面白いのが書けなくて。自分には文章書くことの発想力がないと自覚したんですよ。でも、“面白いことを見つける”ことに関してだけは自信があったんで、辿っていくと編集者という仕事だったと。
特に学生の頃はスタジオボイスが好きで。たくさんのカルチャー情報が雑多に入ってて、クラスの誰もが知らない知識が増えていくのが楽しかったんですよね。中学の頃からヤンキーだったんで、周りの友達には恥ずかしくて言えなかったんですけど。
── そういう意味では子供の頃からブレてないし、ちゃんと自分のことが見えてますよね。
ロマン:
だから割と早く編集者になるための道を歩んでたんですけど、就職活動ではいわゆる大手出版会社を受けて全部落ちました。
── え、そもそも編集者ってそんな賢くないとなれないもんなんですか?
ロマン:
そうなんですよ。特に新卒ではそうですね。
僕は数学が苦手だったし、国語力を図る問題や時事ネタはもちろん、IQテストみたいなんとか全部ごちゃ混ぜでめちゃくちゃ難しいんですよ。
そんな時に、たまたま雑誌の「TOKYO GRAFFITI」から取材されたんです。その場にいた副編集長に「雑誌が好き」っていうことを伝えてなんとかインターンとして入り込むことが出来て、そのままバイトを経て編集部に残ることが出来ました。
── やっぱり、編集者になるまで全然ブレてないじゃないですか。
ロマン:
いやー、一回挫折したからですかね。いまライターをしてるのは作家になりたくて、書くことに挫折したからですし。
文章で魅了するのが出来なくても、企画や情報を伝える上手さで記事が跳ねることがある。そこがライターと作家との違いですね。
それって悪い意味じゃなくて“誰でもできる”と思うんです。
編集者として一個の作品を作ってる感覚
── それじゃ早速、編集者の仕事について聞きたいんですが、いったん全部言ってもらって箇条書きにしてもいいですか?
【編集者の仕事】
・企画
・進行管理
・構成づくり(デザインラフ)
・写真の指示
・ライティング
・キャッチコピー制作
・校閲
・街に出ての情報収集
・取材先との交渉
・制作とのコミュニケーション
── うわ、多い。Web制作においてのディレクターに近いけど、写真の知識もいるんですね。
ロマン:
グラフィティ編集部に入った当初は「文章が下手くそだ」と、編集長からずっと怒られていたんですけど、見かねた上司が僕にアドバイスをくれたんですよ。
まずは「新聞の社説を毎朝100字にまとめる」。
元からまとまってる文章をさらに短くまとめることで話の要点を見つける練習になりました。
そして「写真を学びなさい」。
雑誌編集者は文章を大事にしがちだけど、読者にとってはパッと目に入る写真が一番で、そこが良くないと文字も読んでくれない。写真が好きな人とそうじゃない人が作る記事は違いますね。
僕がいた編集部では自分で写真も撮るから技術的なことも知らないといけないし、写真を見ただけで一発で企画がわかるのが良いとされてました。
── 紙面のデザインも編集者がするの?
ロマン:
デザイン自体はデザイナーがやるんですけど、ラフを作るのは編集者なんで、企画をどう見せたいか問答できないといけないんです。良いものを作るにはデザイナーとやり合うことが大事ですね。
── そんな編集の仕事においての成功ってなんなんですかね?やっぱり良い記事を作ること?
ロマン:
編集者って一個の作品を作ってるような感覚で、デザイナーさんや作家さんと良い記事を作り続ければ仕事も増えると思いますよ。
でも、編集者としては「言葉を生み出す」ていうことも大事なんです。
雑誌の「ポパイ」が流行らせた「シティーボーイ」だったり、「ar」が生み出した「おフェロ」だったり。そういうキーワードを生み出すことができるのも編集者なんで。
一ヶ月ごとに作る雑誌の企画からブームを作れるのって、広告のコピーライター並にすごいことですよ。
自分が面白いと思うことを信じる
── 編集者って企画も立てるんですね。それって企画書も書くんですか?
ロマン:
東京グラフィティ時代は5人の編集者と企画のページの取り合いしてましたよ。
自分はみんなが行きたくないような取材先など「アウトローな企画」が好きだったから住み分け出来てたんですけど、編集者はそういう自分の企画を通すための企画書もかけないといけないんです。
雑誌では決まったコーナーが多いので、毎月新しい企画は1〜2つくらいしか通らない。
だから企画力が大事になってくるんですが、その時に「自分だけが考えている企画」を持っていることが大事なんです。だから、他の編集者と企画のことについて見せ合ったりするなと言われてました。
── じゃあその企画って誰の評価を基準にしてる?やっぱり読者?
ロマン:
僕は「自分のことを面白い」と思ってるんですよ。
── え?ああ、自分ってロマンさん自身のこと?
ロマン:
物事を発信する側として、そのスタンスは崩しちゃいけないと思うんですよ。
読者に色々言われても、その言葉が必ずしも正しいとは限らないし、気にし過ぎて企画が弱くなるのもよくないので、自分が面白いと思うことを信じるようにしてます。
── まあ確かに… そうじゃないと「自分だけが考えている企画」は作れないもんね。
ロマン:
聞くとすれば、自分が信頼できる友達とか同業者の知り合い、仕事で関わってる人とかと、飲みに行ったりして、長い時間をかけて意見をもらいますね。ちゃんと企画意図も伝えてヒアリングした方が、的を得た意見をもらえますもん。
「最近の俺どうっすか?」って感じで
ヒアリングします。
雑誌では面白い記事ができなくなってきた
── 紙のメディアとWebメディアの違いを聞きたいんだけど、雑誌とかの役割って何だと思います?
ロマン:
雑誌っていうのは「本物の情報」を伝えるために必要なんです。
僕は食べログがあんまり好きじゃないんですけど、あれって誰も編集していない情報がそのまま掲載されているでしょ。
雑誌は毎年「作品性」がどんどん上がってるんですけど、ただ集めた情報を並べるだけじゃなくて、編集者が自分で面白い発見をして、空気感まで感じるような濃い情報を深く伝えることに意味があると思ってます。
── じゃぁWebメディアの役割は?
ロマン:
「挑戦できる場所」ですかね。本が売れない時代になっているのは事実なんですけど、昔みたいなふざけた記事や突飛な企画ができなくなってきているんですよ。売上が担保できる企画じゃないと通らなくなっているから。
逆に、Webメディアでは雑誌では攻めすぎてて出来ない企画ができる場所であって欲しいんです。
僕がWebの仕事をするようになって驚いたのが「はてなブログ」とか「note」とか、元々読者がたくさんいる媒体に素人がいきなり寄稿できるってところで、すごい面白いなと思ったんですよ。これはスターが生まれやすい状況だと思うし、紙より圧倒的に強いところですよね。
── ブルータスとかにいきなり素人の記事が掲載されるみたいな、よく考えたらWebって変な媒体ですよね。
紙で活躍してる先輩方をWebに引きずり込みたい
── 正直、あんまり考えずにインタビューに誘ったけど、思った以上に編集者の仕事について聞けた気がします。最後に、これからロマンが人間編集部でやりたいことって何?
ロマン:
今まで雑誌の編集者としてやってきた僕の役割として、紙の媒体で活躍してる先輩方を「ネットやったら面白いことできますよ」って、引きずり込みたいと思ってるんですよね。ZINEとかだと、著名人やプロの作家も参加したりすることが多いんですけど。
── Amazonプライムに松本人志が番組持つみたいな感じですね
ロマン:
例えば、自分が担当した稲田くんの野菜グラビアの記事は、紙の雑誌では通らないような初期衝動のような企画でなんですけど。青山裕企さんのような紙媒体で活躍するカメラマンをブッキングして、約70万PVもいきました。
それを見て僕の編集者的なアンテナが狂ってなかったこともわかったんですけど、そうやってすぐに反応が返ってくるネットってやっぱ面白いなって思いました。
今までって、雑誌で連載する、本を出すっていうのが正義だったと思うんですけど、紙で活躍してる人がネットで連載を持てば、もっと面白いことが起こるフェーズなんじゃないかって可能性を感じてるんですよ。
──人間編集部のコンセプトって「面白くて変な人が集まっている」だけど、記事作りって人も集めるのも大事ですもんね。
ロマン:
人間編集部で準備サイトを立ち上げる時に、山根さんが持ってきたデザインラフを見てびっくりしたんですよ。だってトミモトさんに並んで2番目に自分の顔がもう入ってたんですもん。
自分では、担当してる仕事のために来てるだけだと思ってたので、それを見た時に初めて「自分ってもう一員なんだ…」って知った。
人間さんって、勝手に引くに引けへん状況作ったり、無意識で人を引っ張り込むような引力みたいなん持ってるんじゃないですかね。
──ごめん、天然で勝手に顔写真入れてた。あれドッキリになってたんや… 勝手に入れたけど、これからも人間編集部をよろしくお願いします…
人間編集部のWebサイトが出来ました
さて、勝手に人間編集部 副編集長に任命してたロマンさんに“編集者論”をお聞きしてみたんですが、思った以上にWeb業界で言うディレクター・プランナーに近い職業だなと思ったし、だからやってて親近感湧くし、うちがWebメディアやってるのも違和感も感じなかったんだなと再確認しました。
そんなやりがいがありそうな編集者も募集している人間編集部のWebサイトも出来ましたので是非一度ご覧になってください!以上!