「世界ウケ」教えてください。 CEKAI 井口皓太 インタビュー


山根 シボル
author
山根 シボル

どうも、人間の山根シボルです。
我々は去年から「万博が大阪に来るなら関わりたい!」って感じでフリーペーパーやらイベントやら活動を始めているんですが、今年の初めに大事なことに気づきました。

「そもそも自分が世界的に活動していないと説得力ないんじゃないか」

そう思うと、ウチの作品って国内でしか機能しないようなネタしか作れてないんじゃないかと不安になり、「世界でウケる」ということを考えたくなってきました。そこで思い浮かんだのが CEKAIの井口皓太氏です。
まさに「世界ウケ」する実績を残してきたCEKAIは、東京、京都に加え、昨年末にはロサンゼルスにもオフィスを立ち上げたらしいんです。

一体どうやったらそこまで「世界ウケ」するのか?
京都・出町柳にある古民家を改造した妙に落ち着くオフィスにお邪魔して、直接、聞いてきましたよ。

井口 皓太(いぐち こうた)
映像デザイナー /アートディレクター/ クリエイティブディレクター

デザインチームTYMOTE、デザインアソシエーションCEKAI両代表。2014年に世界株式会社を設立。会社や所属、肩書きによるフレームを超えた、クリエイターとマネジメント、社会とが真に共存する場をクリエイションしている。近作としては、彦根城PV「彦根に集え」、NIKE “FUTURE OF AIR”、UNIQLO The Art and Science of LifeWear Creating a New Standard in Knitwear Room2-演出などがある。主な受賞歴に2014東京TDC賞、D&AD2015yellow pencil、NY ADC賞2015goldなど。
「TYMOTE」という社名は、大学時代に長髪だった井口氏が友人から「その洗い方ティモテかよ」って言われたのが由来。

面白い人を集めることから始まった「TYMOTE」

── 井口さんといえば「TYMOTE」だけど、めっちゃデビュー早いですよね。

井口:
大学生の頃、普通に会社員になっていく友人たちを見て違和感があって、同世代の面白い人を集めてDVDを作ったんですけど、それが「TYMOTE(ティモテ)」でした。当時は若かったから、何に対してだか分からないんだけど、違和感とか怒りに満ち溢れてて。目標としては「NIKE」や「ISSEY MIYAKE」みたいな格好いいブランドと、直接仕事できるようになりたくて会社を作ったんです。
でも、やっていくうちにやっぱり代理店とも仕事しなきゃいけないし、いつのまにか大きな渦に巻き込まれてしまった。要は「安くて、若くて、エネルギーがあって楽しい」の枠に完全にハマったんですよね(笑)

── あらま、独自の道を行ってると思ってたのに、既存の枠にハマってるように感じちゃったんですね。

井口:
TYMOTE は俺ら全員を育ててくれたし、夢もたくさん与えてくれたんですが、30歳になる手前で「ここまでだなー」と仲間たちと話し合い、最終的に8人になったメンバーが全員独立しました。その中にアーティストの「やんツー」とかもいましたよ。それで、そのうちのひとつが「CEKAI」なんですよね。

── でもその時代から井口さんの仕事っていわゆる「広告」って感じしなくて、やりたいことやってるように見えましたけどね。

井口:
大学の時から両親のデスマスクでプロジェクションマッピングしたり、当時としては斬新な作品は作ってたつもりなんですけど、最初に自分が仕事したい会社にそのポートフォリオをバーっと送ることから始めたんですよ。
そしたら広告なんだかよくわからない仕事が来たんですが、最初に来たのが「SAMSUNGの新しいスマホを考えたいから君たち協力して」っていう、コンセプトのプレゼンで。

── え、いきなりそんなブランディングみたいな仕事って来るもんですか。

井口:
グラフィックからUIから3ヶ月間みっちり作り込んだのに結局通らなくて、いきなり「死ぬー!」ってなったんですけどね。でも、何が良かったって「そのコンセプト案をWEBで公開していいよ」って言ってくれたんですよ。おかげで「(その仕事を)やってる」と思われて。
そうやって若くして独立したから、他の会社の社長が上司みたいな感じで面倒見てくれたんですよ。インテンショナリーズの鄭さんとか、パーティの伊藤さんとか、ライゾマの齋藤さんとか。

── なるほど、それがきっかけで「ビジュアルを作る人」という認識が広がったんですね。


冒頭の写真のせいで怖いイメージですが、
本当は終始爆笑しながら話していた明るい井口さん。

「とにかくわかりやすくしろ」

── 井口さんの中での最初の「海外ウケ」ってなんでした?

井口:
「Kanji City」ですね。2012年くらいに、パーティの伊藤直樹さんと一緒に作った映像です。元々の仕事は、ジムのトレーニング中に走った距離に連動するアプリで流すアニメGIFの仕事だったんですが、京都編を作るってなったタイミングで、それこそ「世界ウケ」を意識したんじゃないですかね。「いいねー、最高だよ!」とか言いながら、別々に作ってたアニメも繋げて賞レース用の映像を作り込むことになったんですよ。
「もう別の仕事じゃん!」って感じで結局半年くらいかかりました。



── 半年は長い! そこで初めて世界を意識した映像を作ることになったわけですね。

井口:
伊藤さんからは「とにかくわかりやすくしろ」ってディレクションが入って。当時は若かったからもっと尖った表現をしたかったんですけど、「桜だからピンク」みたいにとにかく疑問を持ちながら作ってました。
この時のPARTYのこだわり方がすごくて。説明資料でも「スポーツジムのトレーニング用」ってことは言わなかったんですよ、「漢字をモチーフに映像を作りましたよ」ってだけで。だから映像作品として賞を獲れたんだと思います。
それで「賞獲れてるっぽいから井口行ってこい」って言われて、なんだかわかんねーなーと思いながら初めて海外の授賞式に行ったんですけど日本と全然違うんですね。

── それは会場の雰囲気が全然違ったってことですか?

井口:
その時、賞を総なめにしてたのが「Dumb Ways to Die(マヌケな死に方)」っていう陽気な音楽に合わせてどんどんキャラが死ぬアニメなんだけど、会場の大人たちが一緒に歌ってバカみたいに盛り上がってんですよ「お前たちが一番だよ」って感じで。海外ってクリエイティブに対してここまで評価してくれるんだって思いましたね。

国内と国外の二軸の幅

── 授賞式って日本だったらちゃんと賢そうなことの一つも言わなきゃって場になりそうですもんね。

井口:
その授賞式の時に審査員から聞いた話で、日本人の作品ってよくわからないんですって。なんかすごくよさそうなんだけど「マジで意味わからなすぎてダメだ!」ってなるらしい。
ハイコンテクストなんでしょうね。文化とか文脈なんて知らなくても理解できるようなものが求められてるってことだと思います。どんな人でも気持ちいいとか、どんな人でもかわいいとか、そういう普遍的なものをリアルに感じることができましたね。

── でも、最近の広告賞の流れって文脈ありきと言うか結果(result)を重視したりしてませんか?

井口:
“ビジュアルの見せ方”で行くのと“情報を詰め込む”のと両方のパターンがあると思うんですけど、まずは直感的だったり体験的だったりで評価されることかなと思います。でも、日本ではウケないことを逆手にとって、同じ企画で仕掛けてやろうと思ったんですよね。

── 「Kanji City」のわかりやすいビジュアルって日本じゃウケなかったんですね。

井口:
その時の僕らって日本の他のデザイナーからはチャラいと思われてたと思うんですよね。
だから日本のTDCみたいな、日本のタイポグラフィのハイコンテクストな部分にも刺さるような表現をやろうと思って、大原大次郎さんとやった HaKU「everything but the love」MV では、同じコンセプトのまま真逆にして、日本人にしかわからない表現でやったんですよ。



井口:
「Kanji City」ではちゃんと漢字が文字として迫ってくるってところを、「everything but the love」では読めるギリギリ、文字として成り立っているのか分からないやつが飛んでくるみたいな。 それでTDCも獲れたんですけど、そこで僕の中で国内と国外での二軸の幅が重要視できたって感じでしたね。

外国人が見ている日本

井口:
そんな感じで二軸の幅がわかって、見えて来たのが2020年ですよね。
さっきの大原大次郎さんと「外国人がどっと東京に来たら、浅草のおみやげの相撲文字もプロのデザイナーが考えたタイポグラフィも、見分けがつかない状況が押し寄せてくるんだろうな」って話をしてて。外国人からしたら「浅草のお土産の文字めちゃくちゃカッケー!」ってなるかもしれないじゃないですか、有名デザイナーが手がけてなくても。

── 確かに、僕らも外国行ったらどれがデザイナーの仕事かなんか考えてないかもしれない。

井口:
それでデザインの文脈から離れて行って、エンターテイメントの方に考え方が変わったかもしれませんね。例えば彦根城の案件では「外国の人から見た日本」を作ってみようと思ったんですよ。



なんでかっていうと、何年か前に僕らがかっこいいと思ってた「Wieden+Kennedy Tokyo」っていう全世界に張ってるエージェンシーが日本に来た時に、HIFANAさんと一緒に日本のカルチャーをかっこよく表現した映像を作られたんですが、それを外国人が作ったってことに驚いたんです。つまり日本人がかっこいいと思うものを外国人に仕掛けられてたと。
それで「外からの視点で日本人を作る」ってことをやったほうがいいのかなって思ったんです。

── なるほど、それで「海外から見た日本」が彦根城に合うと思ったんですね

井口:
あと、あれが面白いのは地方なんですよ。東京じゃない、東京だったらこんなことはしようとは思わなかった。えーと、地方だからあれがいいと思ったんだよなー……かんけーねー感… そう「関係ねぇ感」ですね。

── え?関係ねぇ感?

彦根とか地方とか関係なく、ちょっと前の東京っぽくても関係ねえっていうか… 
「昔、海外が作った東京での戦略が今は地方でも起こってるよ」って見せ方もあり得る、と思ったんですよね。だからわざと“僕らが見ていた東京のカルチャーのアップデート”って表現をやったんだけど、そういう「東京から地方へ」っていう順番も面白いと思った。

── それめっちゃグローバルな発想ですね。海外から見たら日本って東京だけじゃないですもんね。


「関係ねぇ感…」

海外の人も日本がかっこいいと思っている

井口:
その彦根の時に“ひとつ前の東京のカルチャー”をやって見たら面白いことが起こって。ここから急にグローバルな話になるんですけど、今は各地、各業界に散らばっている当時の「Wieden+Kennedy Tokyo」のディレクター達が、僕らの彦根城の映像を見てくれていて注目してくれたんですよ。
「今でもそういうことやってる人いるの?」って感じで、世界で活躍する先輩方から仕事のお誘いが来た。
狭い東京で作ってたと思ったらいきなり世界につながる感じがなんか、幽遊白書の最後の方で結局「雷禅の昔の連れの方が半端なく強かった」みたいな世界観に似てて好きなんですよ。

── 急になんなんですかその世界観。

井口:
「目立ってるやつよりも半端なく強いやつが裏側にいる」みたいな感じですよ、世界広いっていうか。
僕たちが日本でやってるのを見てくれてる、グローバルな視点を持った先輩達がいるんです。いろんな人種の人が実は日本のクリエイティブもチェックしてて、日本が超かっこいいとも思ってますよ。

── へぇ。世界規模の青田刈りみたいな、ちょっといい話ですね。

ロスで挑戦することについて

── なんでロサンゼルスにも会社を作ることになったんですか?

井口:
さっきの話に繋がるんですけど、日本で仕事するのはもう見えすぎてると思うんですよ。何やってもCEKAIとしての見え方が気になっちゃってノイズになるし、こっ恥ずかしさが伴うようになって来たんですよね。
対して海外って未知でなんですよ。「HUNTERXHUNTER」の外の世界の話じゃないですけど、未知が相手だったらみんなで力を合わせて頑張れるっていう(笑)。
僕らがどれだけ未知を作れるかによって、その場にエネルギーを作りやすくなるんです。

── 僕が「世界ウケ」を考えるようになったのもそれに近くて、もう20年近くネットで笑いをとろうとやってきて、新しい体験が少なくなって来たんですよね。

井口:
そう、そっちの成長の方が気持ちいいっすよね。
CEKAIって、いわゆる雇用契約がなくて、フリーランスや別の会社に所属してるメンバーなどが集まってる会社なんです。だから、クリエイターたちの熱量をいかに作っていくかというのが必要な会社で、「CEKAIだから集まれる」っていう空気感を作るのが大事。
そこで海外とか“未知であること”にワクワクできるのが重要なんですよ。

── 具体的に井口さんが感じてる、未知のワクワクってなんだと思います?

井口:
日本ではフリー同士ふわっとした関係でも仕事できるんだけど、アメリカではそうはいかないんですね。仕事をするためにクリエイターともちゃんと契約しなきゃいけない。そこで初めて、フリーの集まりだったCEKAIの“チームとしての魅力”とかも現れてくるかもしれないと感じてるんですよ。
これから海外用のWEBも作らなきゃいけないんだけど、これからは海外での「CEKAI」の見え方がメインになってくるんじゃないかな。そっちしか形にならないというか。


未知にワクワクする井口氏

意外とハイコンテクストの方がウケた

── 今までの実績が知られてないロスで、実際にどんな作品がウケてますか?

井口:
今まさに、メンバーたちみんなで「MARVEL」や「ディズニー」などに作品を見せに行ったりしてるんですけど、評価が高かったのは意外とハイコンテクストなものだったんですよ。ちょっと話がブレるんですけど、モーショングラフィックとかタイポグラフィみたいな職人気質な部分がウケてる。

── あら、さっき言ってた「わかりやすさ」とちょっと違うくない?

井口:
思ったよりも、小さい単位の仕事の方がウケてるんですよねー。技術とか、特徴のある個人のスキルみたいなものが重視されてるというか。
逆に海外っぽいとか普通のMVとかは全然ウケない。

── 実際の仕事ってなると評価基準も変わってくるのかね。

井口:
そうかも。でも仕事ってなってちょっと困ってるのはCEKAIって総合力なんですよ。何をやっているか断定できない人たちが集まって、みんなで知恵を出し合って作っていくみたいな。でもいざ「ディレクターを立ててくれ」って言われた時に、「実績が少ないから」みたいな理由で受注が難しかったりするんですよ。その人に頼めば、色んな人を巻き込んで絶対面白くなるのに。
あっちってMVやってる人はその仕事を10本くらいやってるもんなんだけど、日本のクリエイターって色々やるからポートフォリオがバラバラになりやすくて、向こうで仕事しようと思ったらたくさん仕事してないと信用にならないみたい。

── え、それっていくら信用してる仕事相手でもそんなこと言われるの?

井口:
うーん、だから日本ってクリエイター自体がハイコンテクストなのかもしれない。
向こうのガチガチの縦割り社会の中で、うちみたいに「ひとつひとつのプロフェッショナルで総合力で作り上げる」みたいなアイデンティティをどうやって発揮できるかが勝負になってきますね。僕はそのほうが絶対に面白くなると思ってますし。

人間が海外で受けるにはどうしたら良い?

── 今回って株式会社人間が海外でウケるかって話なんだけど、そもそも海外っておすすめ?

井口:
おすすめ!東京はそこまで意識しなくてもいいんじゃないかなぁ。大阪のコミュニティだけじゃなくて他にも拡張できてるんだよって見え方は大事だと思います。
そういえば、人間って笑い以外ないんですか?

── マジで笑いしか無いんですけど、笑いってグローバルでも地位が低いと思うんですよねえ。だから最近はギャグに良いストーリーをくっつけて見せ方を変えるのも良いんじゃないかと思ってるんですけど。

井口:
大月壮さんの「バカ走り」はグローバル展開してましたよね。最初はただ面白い走り方してるだけの見え方なのに、だんだん「世界中の人々が同じことで笑えるんだなあ」みたいに見えてきていい感じでアートになってきた。

── そういうの良いんですよねー。あと発信するための媒体とかどうすれば良いんかな。

井口:
僕は最近フィジカルな場所をつくるものが良いと思ってるんですよ。挨拶代わりにこっちから体験を海外の人に持っていきたいなと。まだ何も決まってませんけど、体験する場所をちゃんと設計しようと思ってるんです。
先に「向こうに合わせよう」って考えてると失敗するような気がしてて、とにかくエネルギーを。そこでエネルギーが生まれてないとプレゼンテーションにならない気がするから「とにかくこいつらなんか盛り上がってるな」っていう場所を作らないといけないと思うんですよ。

── なるほど、先に自分たちで膨らませたエネルギーを海外の人に伝えるって考え方?クオリティを上げるっていうか。自信ねぇなあ…

体験の作り込みが映像をつくる

井口:
もうひとつあるとしたら、映像があるんじゃないですかね…
映像って「圧倒的現場」とその「記録」って分けられる気がしてて、つまり「現実」がないと映像にならないようになってる。逆に映像の人たちは体験的でフィジカルな場を作ることに注力していけば、映像を撮るのはあくまでも記録として成り立ってしまうんじゃないかということです。なんなら色んな人がスマホで撮るくらいでもいい、それが発信につながるから。今世界はリアリティを求めてる気がする。

人間さんで言うと、あっちで「ブラック企業体験イベント」をやるとして、とにかく現場を作り込む。それが起こる設計を時間をかけてする。当日はそれを誰かが「記録」するだけで良いと思うんですよ。

── なるほど。そういえばあのイベント、バックヤード用に監視カメラみたいなのを3台つけてたんですが、それだけ見るとマジのブラック企業の映像見てるみたいでめちゃ良いんですよ。その「記録」が起きてたのかもしれない。


ブラック企業体験イベントの監視カメラ映像

井口:
僕は最近、クリエイティブディレクションをやることも多いんですが、国内でそれやってても海外的に評価されない気がしてて、今は一人でモーショングラフィックをシコシコ作ってるほうが得するような感覚があります。作ってるものに哲学が宿るようなものに徹していたほうがいいかも。
日本の感覚で手綱を引くのがうまくなっても、海外の人からは知ったこっちゃないじゃないですか。

── 日本で仕事するには必要なスキルも、あくまで海外を目指すっていうんならそうなりますかね。

井口:
今って「日本の文脈なんか関係ないよ」って感覚じゃないですか。ヒロ・ムライさんっていう「This is America」のMVを撮った監督がいるんですけど、黒人の怒りを日本人が作ったりしてるんです。結局、僕らに「海外で何がウケるか」なんてわかるはずないんですけど、重要なのは自分たちが正しいと思うものやちゃんと伝えたいと思ってるものを作ろうってことですよね。

── いやそれってもうウケてるから言えるんじゃないですかね。なんかウケるコツ教えてくださいよー。

井口:
日本でモノ作るって、かなりハイコンテクストなことになってて、すげー難しいこともバランス取ってやってると思うんですよ。それをうまいこと開放してあげればいいと思います。文脈を全部取っ払うことはないし、ネガになってるところを外しながら海外に持っていくというのが正しいんじゃないかなあ。

日本のアイデンティティ持ってくか置いてくか

── うちの仕事や作品もそのまま持ってったほうが良いのかなあ。

井口:
そういえば、いまうちのプロデューサーが悩んでるのが「日本人のアイデンティティを言うか言わないか」なんですって。世の中のトレンドとしては「人種なんて関係ねえ」である一方、日本ブランドの価値は高まってる現状もある。でも日本人だけのチームに見せちゃうとなんか違う気がするから現地のスタッフも入れたい。でもそうすると日本人のクラフトマンシップ的なものが薄くなる…ってぐるぐるしてる。

── 「人種なんて関係ねえ」なぁ。じゃあ逆に日本人がやらないようなネタはどうですかね? “ドナルド・トランプのものまね”とか。

井口:
それ完全にあっちに迎合してるじゃないですか!ネタのスタイル忘れちゃってる。

── 難しいなぁ。例えばチームラボって向こうでウケてるんですか?

井口:
ウケてますよー。ああいうのは文化になっちゃう可能性だってありますよ。EXILEも最初は若いお兄ちゃんのダンス集団ってイメージでしたけど。小学校の義務教育にダンスが入るとか、それこそ時代に即したコンテンツになってますよね。
こないだ日本の若い女の子に今の女子のメインストリームって何なの?って聞いた奴がいて、「ファッションメンヘラ」がギャルに代わるものとしてあるんですって。それで海外でも最近ナードな女子が流行ってるじゃないですか。結局、日本の女子高生の方が海外よりも進んでるんじゃないかって話もある。

── さらに話がややこしくなってきたぞ。

井口:
とりあえず、日本の女子高生に注目!ってことで。
人間さんも次は女子高生と一緒にやったら良いんじゃないですかね?


見送ってくれる井口氏
変な相談に乗ってくれてありがとう

結局、自分たちのエネルギーって何?って話

CEKAI、その前身TYMOTEはまず働き方が変わっている。フリーランスの職人たちが「CEKAI」というひとつのエネルギーの元に集まっているようなチームである。特に井口氏は広告を作っているという感覚はまったくなく、自分の映像表現の新しさを追い続けるのに最適な方法を探している途中のように見えた。対して、株式会社人間はメインはあくまでクライアントの要件を満たすためのクリエイティブであり、それと自分達の個性的な表現の二本柱の間を忙しく往復してるような気分だ。

どっちが正しいと言うか、なぜ海外でやるかという話で出てきた「どれだけ未知を作れるかで、その場にエネルギーを作りやすくなる」という言葉が、ひとつのヒントになってる気がしてて、自分が何にエネルギーを注げるかということを自覚することが大事なのだろう。それを挨拶くらいのノリで海外の人に見てもらうのだ。

今はとにかく、最後に言われた「女子高生」というキーワードのエネルギーに引っ張られているので、「女子高生」と仕事できるような企画にエネルギーを注ごうと思う。