頭を捻りすぎて捻れてしまった「捻賀状」ができました

2024.02.05

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株式会社人間

あけましておめでとうございます。
株式会社人間の社員ではない百瀬ガンジィと申します。

株式会社人間では年末になると「よくわからない変なもの」を年賀状と言い切り、
お世話になった企業様に送りつけてはニヤニヤする風習があります。
今回は私がその「よくわからない変なもの」を作り出すきっかけを作ってしまったので
この場をお借りして開発当時の状況をできるだけねじまげずにお伝えさせて頂こうと思います。

 

捻くれましておめでとうござい巻き

というわけで今年の株式会社人間の年賀状です。

 

 

見たまんまです。年賀状をひねりました。もう、物理的に。

 

ひねって、ねじれたまま固まっているので中央部分はひねり返して読むこともできません。裏も表も。
ひねくれた社員ばかりの会社ですので名ではなく、年賀で体を表しました。

 

 

例年同様、取引先の皆様には戸惑っていただき、大変ありがとうございます。

 

ただ、戸惑いすぎて

「年賀状がイタズラされたと思って防犯カメラまでチェックした

「郵便受けに、怖い年賀状がきてる…と同僚から渡された」

「局員が年賀状を曲げちゃったかもしれない、と郵便局から言われた」

といったお声も伺っております。

見たことないですよね、こんなひねくれた年賀状を。
こんなひねくれた年賀状にGOサインを出すひねくれた会社を。

新年からアホな意味でお騒がせして大変申し訳ございませんでした。

 

「捻賀状」になるまで

さて、この年賀状ができるまで。企画段階からの流れです。

株式会社人間では年末近くになると「年賀状ブレスト大会」が開かれます。
例年、社員、アルバイト、インターン、なんかよくわからない知り合いが頭をひねって年賀状アイディアを出し合います。年功序列関係ありません。

今回もこのブレスト後、プロデューサーである花岡さんのOKが出た数案がプロトタイプ作りに移るのですが…

今年は(今年も)早々に撃沈。ふりだしへ戻りました。

噛んだガムを送りつけるなよ。失礼すぎるって!年賀ってもっとめでたいだろ。
あと500枚も粘土こねて色塗ってナンに加工できると思うか?そもそも面白くないし。
てかなんナンだ?年賀状って…!ってな具合です。

ただ、年末の大変忙しい時期に行われる年賀状作り。しかも2023年の初冬の株式会社人間は通常業務に加えてリアルイベントが連発で社内が大変慌ただしくもありました。
特に代表の山根シボル氏はず〜〜っとギュ〜〜っとシボられまくりのスケジュール。年賀状担当ディレクターの武藤氏も出張が多くあまり出社できず、他の社員も同じく余裕なし。

…ですが、社外の人間であるガンジィは割と他人事でした。
みんな年末進行で大変そうですね〜ハハハ〜と軽い気持ちでおりまして

株式会社人間の代表取締役の忙しすぎる現状への憂い
企画という皮に包んでチャットに投げつけました。

ちなみにフリーランスの身で取引先にこのような生意気な真似は基本自殺行為です
マジでお勧め致しません。ストンと信頼をなくします。

…ですが、株式会社人間はと言いますと、

何故か採択の方へ。
シボルの年か…いやいやいやいや、皮肉なんだって

小粋な(ブラック)ジョークのつもりだったんですが採用の方向へ向かい逆に焦ります。
本当にこの企画、大丈夫なのか?

大丈夫でした。
山根シボル氏によってシボる年賀状にテコ入れならぬ「ひとひねり」が入れられ、
ひねりすぎた年賀状に進化しました。
あ〜よかった…うまいことまとまりましたね。本当にシボルの年でした。ありがとう、アイディアマ〜ン!

ただ、この段階になると年賀状をどうひねるんだ?材質は何?といった問題が浮上します。
ですが私の担当、企画の領域は完了。
あとは毎度お馴染みデザイナーの松尾さんとパワーディレクターの武藤さんのコンビに残りタスクをブン投げします。はい、お疲れ様でした〜〜。

 

「捻賀状」のデザインをひねりあげる

どうも、武藤です。

年賀状のアイデアがどうにかやっと捻り出され、ほっと一息ついたのもつかの間。
さてこれはどうやって作ろうか。
師走の忙しい中、デザイナー松尾さんと共に頭をひねり、紆余曲折を経て、ついに「年賀状の捻り方」を生み出すことができました。

きっと皆さんが今までに一度も目にしたことのない、そして今後も一生使うことがない「捻り上げ」の技法を、ここにご紹介いたします。

1.素材を決める

まずは、どんな素材でこのアイデアを形にするかの検討を始めました。

皆さんのお手元に届くその時まで、年賀状はしなやかに捻れ続ける必要がありますから、一定の硬さ(剛性)が求められます。
硬い板、ということで金属の板なんかも候補に、いろんな板を力任せに捻ってみたのですが、容易にはうまくいかず、早速苦戦を強いられました。

そんな時、ふと童話「北風と太陽」が心に浮かびます。
力ずくで曲げようとしても曲がらない。そうではなく、自然と曲がってしまうような状況を作り出せば良いのではないかと。
試しにプラスチックの板に熱をあててそっと捻ってみる。するとまるで赤子の手をひねるかのように、やすやすと変形に成功しました。

これにより「プラ板にアイロンで熱を加えて、捻り上げる」という基本的な工程が決まり印刷の専門家サンクラールさんに相談へ。
綺麗に印字され、一見するとただの年賀状のように見える素材と言ったところ、複数の候補を提案いただき、実際に捻り上げながら選定したのが今回の素材になりました。

2.デザインの検討

次に検討するのは、年賀状に記す新年の挨拶です。
「捻られた年賀状なのだから、何かひねくれたことを書きましょうか」と、社内でも一際ひねくれ者の岡シャニカマからの、素直な提案。
彼のその言葉がきっかけで「上半分には真面目一直線な新年の挨拶を、捻じれた下半分にはひねくれた言葉を散りばめる」という構成が決定しました。

出来上がった文章をデザイナーの松尾さんがレイアウトし、捻られて見えなくなる領域との調和を計りながら、今回のデザインが完成しました。

ちなみに捻られた部分には、今年の干支である龍のイラスト巻き込まれています。
これに気づいた方がいらっしゃいましたらお見事。あなたも立派なひねくれ者ですね。

3.量産方法を検討

ここまで工程が進んだら、あとは”捻り上げ工場”をつくり、量産体制を整えるだけ。

600部以上もの年賀状を精度良く、誰がやっても確かな品質の捻り上げを実現できるように、熱を加える時間や範囲を検討。
熱を加えるのに必要なアイロンがけ時間40秒も測定し設定しました。

年賀状の挨拶側に40秒アイロンをかけて柔らかくする

試作での送付テストも無事届いたしいよいよ…!というタイミングで私、武藤は1週間出張へ行くことになりました。なので新しい工場長「ガンジィ」さんに全てを託すことになります。

驚きと焦りが溢れ、むしろ笑顔になっちゃうガンジィさんの「おい、まじかよ!!」の声が今でも思い出されます。
さて私の引退は、一つの終わりではありますが、同時に新しい物語の始まりでもあります。
ガンジィさんのもとで、この捻り上げ工場はさらなる高みへと成長していくことになります。グッドラック。

大量の年賀状を捻りまくる

ということで、年賀状工場の工場長に任命されました百瀬ガンジィです。

このあたりから私は「武藤さん」から「武藤」と呼び捨てになったと記憶しています。
武藤、お前もいつか捻り上げるからな!!などと嘆いているだけでは何も生まれません。

この年賀状工場を家内制手工業で動かしていきます。

工場の様子(一番人数が多かった日)

さて作業工程ですが、

まず宛名を書くには1件大体平均で60秒
そして捻り上げにはアイロンかけ時間40秒、ひねる・温める時間20秒
つまり1件に120秒…つまり2分ほどかかります。
更にはちゃんと届けるための宛名のシールも貼りますし、確認時間も必要で、

600件も出すと考えると…24時間以上が必要な計算になるんですよね。は??

もちろん年賀状以外にも仕事はガッツリあるし…更に捻り上げは成功度が少々低め。
結構な頻度で捻り損じが発生し、更に遅れが生じます。

捻り損じした年賀状数十枚

つまりは無〜理。
無理無理無理。本当に無理だったんです、この年賀状作成は。
年賀状の最後のひとひねりにこんなに時間をかけるものではない。

圧倒的時間不足。

え??これ本当に年内に終わる??と年賀状工場は先の見えない恐怖に包まれていました。

しかし、ここで救世主が現れます。
インターンの三浦さんです。

プロダクトデザイン専攻の工作が得意な学生さんで日頃から実験・検証・改善のマインドが備わっているナイスガイ。彼の稼働及び検証のおかげで年賀状のアイロンかけ時間が40秒から8秒に短縮しました。
恐ろしいほどの業務改善力。逆に武藤や私は何やってんだ。

しかも時間短縮だけでなく大量の捻り損じ発生ほぼゼロに。
捻る時の柔らかさが適度になり、めちゃくちゃ捻りやすい!嬉しい副産物。

聞けば三浦さん、2023年初めに精巣捻転という金…睾丸のひねりで緊急搬送されたとのこと。
いろんな意味でひねりのプロ、もしくはゴールド免許の持ち主だったようですね。

後日、年の瀬に金玉捻り話をDMで共有してくれた三浦氏。おもしれー男。

というわけで三浦さんの改善検証によりスケジュールは大幅に改善。
終わりが見えてからはメンバーの焦りも薄れていき、工場も順調に稼働。

最終日前後には社員たちにも手伝っていただき、年内に無事年賀状作成を終えました。
あんたらはもっと率先して手伝ってくれや。

よかった…なんとか間に合いましたね。

 

ま、本当にギリギリすぎたのでちょっと遠くの郵便局に行くのにタクシーを呼びましたけども。

軽いのですが捻っていて綺麗に重ねることができず、かさばって4箱分になったので。

年賀状を出すのにタクシー使うことってあるんですね。

 

 

ま、さらに郵便局の窓口でも数十分も時間かかっちゃいましたけども。

数えるのに結構な時間とスペースが必要だったようです。すみません。
郵便局の皆様、列にお並びの方々、年の瀬でお忙しい中本当にご迷惑おかけしました。

ということで、投函も無事完了。このレポートも提出し以上をもちまして年賀状工場は稼働終了です。
関わってくださったみなさん、ありがとうございます。お疲れ様でした。

ちなみに今回の形状は年賀郵便としては送ることはできず、
大阪近郊の方は年内に届いてしまったかもしれません。

捻賀状だけに巻きで届いた、という事にしてください。

本年も株式会社人間のひねくれくだを巻かずお付き合い頂けますと幸いです。

 

「捻賀状」の製作に協力してくれた方々

有限会社サンクラール
金子千紘
三浦世那
齋藤颯
江口蒼師
葉山いつは
百瀬ガンジィ