ゲーム業界の何が変わった?クリエイターがインディ化する理由

2019.04.03

山根 シボル
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山根 シボル

どうも、人間の山根シボルです。

突然ですが、自分が子供だったPS1〜PS3くらいまでの時代と、最近のゲーム業界はなーーんか変わった気がするんです。37歳の僕から見た最近のゲーム業界は、「国内有名メーカーVS洋ゲー」みたいな構図から「大きな世界の中の各国のゲーム文化」に変化したようなイメージに見えるんです。
特に、少人数で制作し低価格で販売するインディゲームの活躍が顕著で、ゲームの販売ランキングもメジャーな会社が多額の予算をかけた「AAA」のゲームと、人気を競い合っているような状況です。

そんな、僕の感じている違和感やモヤモヤをなんとかしたいなぁと思っていた矢先に、インディゲームの情報サイト「AUTOMATON」や、国内外のインディゲームをローカライズし、全世界で販売するパブリッシャー「PLAYISM」を運営する株式会社アクティブゲーミングメディアさんがすぐ近所にあることを知り、さっそく連絡をとってしまいました。

今回は「PLAYISM」の水谷さんに「今のゲーム業界って何が起こってるの?」という疑問をぶつけてみることにしてみます。

水谷 俊次(みずたに しゅんじ)
株式会社アクティブゲーミングメディア デジタルコンテンツ本部パブリッシング部長。

2011年5月11日よりインディーゲームブランドPLAYISMを運営。最終的にはゲームという表現手法の地位向上に寄与できればと割と大きめの理想を思い描き、インディーゲームの価値最大化のためにPLAYISMを通じて日々奮闘。取り扱い最新作は『ナイト・イン・ザ・ウッズ』

まずはこのランキングを見てください

── まずこれ資料として持ってきたんですけど、3/1のNintendo Switchのダウンロード専用ソフトランキングなんです。


見にくくて申し訳ないので書き出しました↓

── ほぼ半数くらいインディゲームになっていると思うんですが、どういう人がインディゲームを買ってるんですかね?

水谷:
インディゲームって割と懐古主義的なところがあって、絶滅したはずのドット絵のゲームが復活したり、意外と大人の購買層が多いんじゃないかなという実感があります。BitSummitでも30代以上のお客さんが多いですし、一回ゲームから離れていた人が自分が昔やってた頃のゲームの感触に近いものを求めているのかなと。

インディゲームって1日頑張ればクリアできるボリューム感だったりするので、100時間もゲームをする時間なんてない大人達の「限られた時間でゲームがしたい」というニーズにハマったんじゃないでしょうか。
そして、子供にとっては古さも関係なく、安くて楽しいゲームという感覚なんだと思います。

── ってことは、大人にも子供にもウケてるという状況があるんですね。

水谷:
Switchがさらにカオスなのは、3DSの頃は親世代あるいは子供しか持ってないという状況だったのに対し、20〜30代のいわゆるゲーム好き世代にもリーチしたため、割と幅広い層がswitchを持っている状態になっていることです。つまり各世代のランキングが合算されることで、このカオスなランキングが生まれるわけですね。
3DSの時は、キッズが買いやすい「500円以下の小さなゲームをつくりまくれ」みたいな状況がそれはそれでカオスだったのですが、カオスの中身が現在のSwitchの時代とは実はちょっと違うんですね。


落ち着いた口調でとても論理的に説明する水谷氏

大手じゃ「作りたいゲーム」が作れない

── 逆にニーズがあるんだったら、大手がその規模のゲームを作ったりはしないのでしょうか?

水谷:
うーん…大手メーカーがインディっぽいゲームを出したりはするんですが、玉石混交の中で売れるかどうかわからない上に、2,000円以下の低価格というのは、大きな企業からすると売上げとして小さいんです。

逆に中規模以下の会社はみんなインディ化してるイメージです。最近だと日本一ソフトウェアさんとか。元ラブデリックの木村祥朗さんが立ち上げたオニオンゲームスさんも完全にインディですね。


オニオンゲームスが発売した
「BLACK BIRD」

── 最近は開発者が単身でインディに飛び込むケースも多いですし、SNSでの発信も盛んですよね。

水谷:
さっき言ったオニオンゲームスの木村さんもだし、SWERYさん、須田剛一さんもそうですよね。五十嵐孝司さんもご自身で“Igavania”を作ると独立されました。
SNSでの発信が盛んなのは、高額な広告費をかけるような時代が終わり、作り手側が「個人に面白さが紐付いている」ことを証明し続けていかないと食べていけない状態になっているということかもしれませんね…

── 大手の会社を辞めるって結構リスキーだと思うんですが、インディ化するメリットってなんですか?

水谷:
やはり、自分が作りたいゲームを作りやすいということでしょうか。
少し昔の話なんですが、PS2からPS3にかけて開発費がドンドン増大していった時代がありました。つくり手側としては、ゲーム開発に金がかかりすぎてハイリスクハイリターンのビジネスモデルになり、無難なものしか作れなくなったり、リスクを喰らって単純に会社がつぶれることも少なくなかったんです。

── なるほど、それで続編やリメイクが多くなってしまうわけですね。

水谷:
そういった、つくりたいものを作る場所がなくなったところにインターネットが普及して、デジタルのみで販売が可能な「App Store」や「Steam」などが出現し、別にパブリッシャーなしでもゲーム作って売れるよね、という道ができたわけです(これがインディーゲームのはじまり)。
その流れが、PS/Xbox/Switchまで届いてきたと。
極端な話、誰でもつくりたいゲームを開発して家庭用ゲーム機で売りだせる時代になったのは大きかったですね。

雑誌に載れば売れるという時代は終わった

── やはりインターネットの普及は大きかったんですね。

水谷:
はい。昔はカートリッジを作らないといけなかったし、さらにそれを全国に流通しないといいけないとなると個人では不可能でした。
それがインターネットを利用して、個人でもボタンひとつで何万人にも売ることができるようになったんです。「SMASHING THE BATTLE」なんて韓国の方が一人で作っているそうですし、「Stray Cat Doors」も個人でしたね。

昔ならば絶対出せなかったコンシューマ機にも出せるようになったことで、「Minecraft」のような世界中でヒットするような事例が生まれたんです。


今や知らない人がいないくらいの
「Minecraft」

── それって「Steam」の影響もかなりあるんじゃないでしょうか?

水谷:
さっきの話にも出ましたが「Steam」がインディの門戸を最初に開いたと言っても過言ではないと思います。機能的に色々あるんですけど、コミニティやチャット、ライブストリーミングもそのまま出来ますし、なによりゲームのデータ管理が楽なんですね。ある程度のコピーガードもはいってますし、全世界で一気にリリースもできる。大手のコンソールがやるような縛りもないし、PCゲームなら開発機もいらないしハードルも低いと。
そして国内でもPCゲームのユーザーも増え、だんだんとインディゲームの市場が出来上がってきました。

── ゲーム実況が盛んになったり、ネットから口コミが広がるようになったのも最近ですよね。

水谷:
かつてゲーム雑誌・漫画雑誌・あとはテレビCM、ゲームショップ店頭くらいからしかゲームの情報というのは出て来なかったため、情報の発信源がものすごく限られていて、かつお金が必要だった。決まった人が、決まったところで情報を一方的に流してたわけです。

ここにインターネットの普及が重なり、SNSやらゲーム実況やら勝手に誰かが宣伝するようになった。決まった情報源がなくなり、突如話題をかっさらうゲームが現れ始めたことで、ファミ通にも載ってない誰が作ったのかもよくわからないゲームが、まったく予期せぬところから話題になっていきなり売れるという、今までにない流れが生まれました。

とは言え、市場がグローバルになったこともあり今度はローカライズの問題が出てくる。それなりに世界各地で宣伝もしないといけないし、ファンの問い合わせに答えないといけないとなると、一人で全部はできないので我々みたいな“インディーのためのパブリッシャー”という存在も出て来たわけですね。

海外と日本のクリエイターの違い

── 国内でのインディゲームの状況についてお聞きしたいんですが、まずインディゲームの開発者が多い国ってどこになるんですか?

水谷:
インディ開発者が多い国となると、成り立ちとしてアメリカとか東ヨーロッパなどPCゲームが盛んな国に多いです。それに比べて日本では「これで食べていこう」って人は少ないと思います。
その中でも中国は特殊で、コンシューマ機のゲームに対する政府のチェックが厳しすぎて、PCゲームとして世界で売らないと会社としては成り立たなくなったのでインディゲームが盛んになったなんてこともあります。

── 「ICEY(アイシー)」とかすごい売れてましたよね。Switchのランキングでも上位に入ってました。

水谷:
あれは中国でも大手の会社のゲームで、これだけ売れた理由として…XXXXXXXXXXはXXXXXXXXXXXだからっていう話もあるんですが、たぶん内緒の話なのでこれは書けないと思います(笑)

── これ書けないの残念ですね… 日本のインディゲームで一番人気あるのってってなんですか?

水谷:
開発室Pixelさんの「洞窟物語」は世界で一番有名な日本のインディゲームじゃないでしょうか。メトロイドヴァニアと呼ばれるジャンルのゲームなんですが、世界的なインディゲームの走りと言われていて「ドットのアクションゲームが面白い」と認知させたのはこのゲームかも知れません。


幾度も移植される名作「洞窟物語」の
Switch版「Cave Story+」

あと、世界的に売れたのは、Moppinさんが一人で作ったゲームなんですけど「Downwell」ですね。しかし、日本のインディゲームで爆発的にヒットしたゲームっていうのは実は少ないんです。


Moppin氏が一人で制作した
「Downwell」

── 日本でヒット作が出にくい理由ってあるんですか?

水谷:
誰かが言ってたんですが、日本って結構「魔改造文化」で。改良・改造するのは得意なんですが、全く新しいジャンルを作るっていうのは日本人ではなかなか見ないですね。

それと、業界的にも海外の方が成熟してるところがあって、インディ専門の投資会社があったりとかインディファウンドがあったりするんですよ。国内のデベロッパーがアメリカにイベント出展するだけで50万くらいかかるんですが、よくイベントで会う海外のインディデベロッパーに聞くと「海外に行ったり、開発するのに補助が出ています」とか言ってるんです。

海外では20人位の集まりまでインディと呼ばれる中、日本だと個人〜サークルレベルの集まりをインディと呼びます。ベンチャー企業並みの海外のデベロッパーと、日本のホビークリエイター達が戦っているわけですから、レベルの差は広がる一方なんです。
日本でもちゃんとクリエイターに支援してあげられないと、この差は埋まらないんじゃないでしょうか…

「面白い」に国や文化は関係ない

── 国内のパブリッシャーとして、日本のインディゲームや若手クリエイターを探すのもの仕事だと思うんですが、水谷さんが思う海外でウケそうなゲームってどういうゲームですか?

水谷:
例えば、大手のゲームの◯◯版とかあるんですが、そういうのは全然売れなくって。「今、イスが空いてるところを取れるか」が大事なんだと思っています。絶滅寸前のシューティングゲームみたいなジャンルを逆にやるとか、今までにエンターテイメント化されたことがなかった、という見たこと無いものをゲーム化するというか。

── 僕はインディゲームって小規模で作られているせいか、開発者の哲学やセンスが色濃く出ているところが思っていてそういうところが好きですね。

水谷:
そういう作家性が強く反映されるようになったのは、インディバブルの良いところですね。クリエイターが作家的立ち位置を持つことができるチャンスが生まれていると思います。

そうそう、もうひとつインディゲームが流行る理由として、ゲームを作る環境が整ってきたこともあります。Unreal EngineとかUnityとか、いきなり3Dで作れますみたいなのが無料で配布されてるんです。「RPGツクール」で制作された有名なゲームもありますし、デザイナー出身の開発者などもいますから。最近では学生も多いですね。

── 世界中の開発者が増えるとゲームにも多様性みたいなものが生まれると思うのですが、日本と海外で「面白い」の感じ方って違うのでしょうか?

水谷:
国によって難易度の好みの差とかはあるのですが、「面白さ」ということに関しては国とか文化と関係ないなと感じてます。日本人が面白いと感じるゲームは、他の国の人も面白いって言うんじゃないでしょうか。

例えば、国内でも人気のある「VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)」なんてベネズエラ人が日本のゲームから影響を受けて作ってるくらいですからね。だから言語や文化が違っても「面白い」というのは国境を飛び越えて伝わる根本的な感覚なのかもしれませんね。


最新のゲームなのにPC98時代を思い出す
「VA-11 Hall-A」

インディバブルは弾けたと思ってました

── これからは、メジャーとインディの境目って無くなっていきそうですね。

水谷:
今でもほぼないですよね。
危惧しているのはインディゲームもリッチじゃないと売れないとか、AAAゲームと変わらないクオリティが求められたりしてきています。するとまたかつてのゲーム業界と同じ戦争が始まるんですね。(笑)
ゲーム業界の中で血が入れ替わってるだけかもしれないという…

── そうなるとまた新しい表現がやりにくくなる時代がまた来てしまう、と。

水谷:
やっぱり私は、インディゲームって表現として新しいものがあるのが好きだったんですよね。私小説的というか、自分の環境を吐露するかのようなものをゲームとして表現できて、それが受け入れられるような世界。そういう実験的なものが受け入れられる所が良いなと思ったんです。
だから、そこから遠ざからないようにしたいと思っていて、じゃないと今まで頑張ったかいがなにもない。私達もパブリッシャーですが、時代の狭間をぱっと横切っただけになってしまうのは嫌で、だからインディゲームが残してくれたこの状況を、なんとか維持していきたいなと思っているんですよ。

── マンガ業界みたいに、自分だけの表現がしやすい場所になればいいですね。

水谷:
そういう事を考えてる時にいつも思うのはゲームは作るのが大変すぎる。まず普通は一人では作れないものだし、ひとつ作るのに2年3年もかかるものなんですね。これがゲームのネックなんですよ。いくら開発環境が整ってもまだ足りない。
2〜3年も経ったら今度は世の中の状況も変わってたりするでしょう?大変ですよ。

── もっとミニマムな作りができれば良いんですけどねえ。

水谷:
インディも宣伝活動が活発になってきてて、最終的にお金を持ってたほうが勝つという時代にも入ってきてるんですよ。そうなると最悪ですね。だから私達もお金をかけられないクリエイターも勝てる状況を作りたいなとは思っているんですよ。
最近はデベロッパーとゲームの話よりもお金の話をすることが多くなってきて、ビジネスライクになってきてるのはちょっと気になるんですよね。

── 最後に、ゲーム業界は「変わった」か「変わってない」かというと…

水谷:
変わった、ということになりますね。
実は、我々の体感では、ブームは少し落ち着いた時期だとおもってたんですよ。Nintendo Switchが出る直前くらいでインディバブルは弾けたものだと思ってました。“定着し始めた”というイメージです。
でも今こうしてゲーム業界と関係のない方にインタビューしていただいていることを思うと、まだブームは続いてるのかもしれませんね。


気づくと2時間も語ってしまいましたが
大人のゲームの話ができて楽しかったです。

なぜインディゲームは面白いのか?

僕が最初に「違和感を持った」というのは、もしかしたら子供の頃に見ていたゲーム業界への憧れが、大人になった自分が見た光景とのギャップを生んでいるのかもしれない。だって、もう30年以上もゲーム業界を見続けてきたんだから「変わった」のは当たり前だ。

一方的な感想だが、水谷さんから伝わってきたのは「ゲームは作品であり、開発者は表現者である」という、クリエイティブ精神へのこだわりだ。インディーゲームのパブリッシャーという仕事からも伺えるが、常に「面白いゲームを生むにはどうすればいいのか」を考えていて、それは他の開発者も同じなのだ。
だからこそ、無理してでも独立してインディゲームをつくる。そして実際に面白さが伝わったからこそ冒頭のランキングの結果につながっているのだろう。

「なぜこんなランキングに?」という質問は間違っていた。
「なぜインディゲームは面白いのか?」が正しい聞き方だったのかもしれない。